クラシック音楽の歴史的名盤について思うこと。その1

名盤、名演奏、と呼ばれるものが、多くの場合、確かに優れた演奏である事は否定しません。私は好みませんが、ある種の知的テクニックとして、客観的に名盤が名盤たる部分の蘊蓄を語ったり、それをセレクトすることも出来るでしょう。ただ、個人として正直にそれが好きか?と問われた場合、それは録音によって種々様々なのも事実です。実際には、名盤と呼ばれるものでも苦手な物が沢山ありますし、嫌いな演奏家も嫌いな曲もある。また、良いのは解るが感動出来ない、内心ピンと来ないものも沢山あります。

そんなとき、もし自分の価値観が他人の作った物差しのお仕着せであったり、自分の感覚に自信がない場合、権威付けされた世論と異なる解釈を提示するのは極めて難しくなりますし、それでもクラシック音楽を聴き続けるには、権威を信じて疑わない人になるか、むしろ自分の感性を疑って自己否定をしつつ、クラシック音楽は難しいと尻込みしてしまうか、反論を恐れて誰にも好みを語れない人になるか、そんな所ではないでしょうか。
ローゼンクイーン
では、どうして私が名盤に迎合しないのか?第一、私には「名盤として評価されている」事以外に、自分の中で音楽の「好き嫌い」の明確な基準があります。まぁハッキリ言ってしまえば、客観的な演奏技術や音楽の解釈、表現の深さや濃さ、音楽的な完成度よりも、自分で音楽を好きで聴く以上は、何と言われようと、それら以前に、生理的・直感的な「好き嫌い」の方が大事です。だから、CDを買うときに名盤だからなんて理由で手にしたことは殆どありません。むしろ、名盤ですか・・何時でも何処でも聴けるからいらないわね、となる事が多いです(笑) 権威主義的な人々からは、イロモノ系、変わり種のタイ焼きと揶揄されるかも知れませんが、マイナーな演奏家や若手の演奏家の録音でも、演奏者が気に入ればとことん好んで集めます。だって、こっちは二度と出会えないかも知れない一期一会の録音が多いですから!

名盤と呼ばれるものの多くは、良くも悪くも「濃い」演奏が多いです。この「濃い」という部分は、裏を返すと癖が強く、生理的な好き嫌いが分かれて(評価が二分されて)当然なのです。たとえば、名演奏家であっても、人間的に、生理的に苦手な人の演奏する、濃い演奏に触れたとき、その感覚的なインパクトの濃さからも、解釈の細部からも、ある程度経験を積むことで、知的、論理的な意識を交えつつ、音楽的な凄さを客観的に判断することは可能です。ただ、人間は客観じゃなくて主観で音楽を聴いている訳で、気質が合わない人にとって、名演奏と呼ばれるものが時に好きになれないとか、音楽として生理的には不快感、「気持ち悪い」という嫌悪感を感じたとしても、仕方ないと思うのです。或いは、嫌いじゃないけど疲れるとか。

ある人々に強烈な同調感やシンパシーを与える演奏というのは、裏を返せばそうでない人からすると不快な演奏だったりしてもおかしくない。音楽には万人に認められ、受け入れられる名演というのもありますが、クラシックの世界で、名盤と呼ばれているものの多くは果たしてそうかしらと?。勿論、そうした演奏もありますが、誤解を恐れつつ本音を云うと、その多くは、特定の人種が好む演奏が、名盤、定番として権威的にもてはやされているだけではないかな?と感じる事が多々あるのです。
iconicon
ショパン 練習曲集 マウリツィオ・ポリーニ(p)icon

名盤を知っていて評価できるというのは、クラシック音楽趣味という狭い世界の中で、ある種の知的、社会的ステイタスの誇示にも繋がるのかも知れませんが、私はたとえそれが名盤でも、嫌いな演奏や、好きになれない音楽を、さも良き理解者であるかのように蘊蓄でもって語ることは出来ないし、解りもしないのに解ったように振る舞うつもりもないし、振る舞いたくもない。だからといって、自分が理解できない音楽を講釈垂れて否定するつもりもありません。

更に、こういった歴史的名盤至上的な価値観で気になるのは、そういった過去の演奏家や作曲家が過度に持て囃されることで神格化される点です。神格化しないと正当化できなくなるからなのかもですが、実際には演奏家も作曲家もタダの人間です。人格の偏りもあるし駄目人間も多い。日本人は特に、海外の演奏家について、巨匠とか神様扱いしたりしますが、同じ人物の人間性や私生活の滅茶苦茶さや音楽面での軽薄発言を同国人の先生に聞かされて、地に落ちまくりの人としての評価に、予言者は故郷では敬われないというキリストの言葉を思い出したりするのです。作曲家が主語の場合も然り、彼らは神ではない。その前に跪くように同一曲の演奏を並べて、演奏の上下を論じることに本当に意味があるのか?私は間違いなく上手だが、生理的に好きになれない演奏より、下手くそでも好感が持てる演奏を手元に置きたいと思うのですが。。。(その3へつづく)

ピュアオーディオRANKING←そなた達もクリックするが良いぞ♪
mixiチェック このエントリーをはてなブックマークに追加
ブログネタ
クラシック に参加中!