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Rafal Blechacz (ラファウ・ブレハッチ) ピアノリサイタル

今、先日NHKBSハイビジョンで録画した、第15回(2005年)ショパンコンクール優勝者、ラファウ・ブレハッチの来日公演リサイタルを観て(聴いて)います。放送されたプログラムはオールショパンで前奏曲集の前半と3つのマズルカop.50にピアノソナタ第3番という内容。東京オペラシティコンサートホールでの録画。

ラファウ・プレハッチ ショパン・ポロネーズ集

ラファウ・ブレハッチは30年ぶりのポーランド人ショパンコンクール優勝者として話題のピアニストです。ちなみに30年前はクリスティアン・ツィメルマン(ツィマーマン)。優勝当時直ぐにコンクール本選のピアノ協奏曲第一番のポーランド輸入盤CDを手に入れて、一回聴いてそれきり、私の中ではスルーになってたのですが…。、世間ではこの青年はどう評価されているのかしら?

アーティスト:ラファウ・ブレハッチ
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放送を観ての感想ですが、流石に今時の若者らしく技術的に大変優れているのもありますが、決して勢いで弾き飛ばすことなく、細部に至るまでとても丁寧な演奏をしているのが印象的です。難度の高い部分でも全く混濁した部分が無く、一音一音全てが大切にされて明瞭に聴き取れる、構築的で明瞭な和声と弾き方。悪く言えば極めて現代的で、今時のクールでライトな若者?と言いたくなるようなデジタル風味(オーディオで例えるとね)な部分も多々あるのですが、響きの背景が静かでとてもクリアで純粋な音色なので、理屈っぽい解釈にありがちな殺伐としたイヤミがない。ナチュラルミネラルウォーターの如きのど越しの良さです。無理にピアノを叩かないから本当に音色がクリスタルで奇麗。そんなんで、彼の場合弱音方向への表現力が際立っているけれど、反面全体のボリューム感というか迫力、音の深みはあまりない。これは椅子の高さがかなり高いからというのもあると思うけれど、全体に音の重心が高くて、表現がコンパクトになってしまい、その部分はプロのピアニストらしくないかなと感じます。(一流のピアニストの多くはおしなべて音の重心がとても低かったりする。注:だからといって決して重くなってはいけない)

それと、表現の仕方が全体に楷書的というかゴシック体の文字で書かれた詩を読んでいるような…ショパンというのは手書きの筆記体の詩だと思うのですが、ピアノという楽器を見事に弾きこなしているのですが、楽器の枠組みを超えた音楽として十分歌えていないように感じるんですよね。ピアニストとしては素晴らしいけれど、芸術家としてどう?みたいな。そういう部分でショパンの詩情を歌い上げるにはやや情感不足というか、自発的な表現力というよりはまだ解釈を教わって歌って見せているという感じで、生まれ持ってのショパンの表現者、ソリストとしての求心力にはある種欠けているようにも感じるのです。演出的な意味での派手な、あるいは深みのある個性がない。ピアノに向かう彼の存在自体ほんとうに奇麗で上品な青年という感じで、芸術を探求している者特有の光と陰とか、生まれ持った強烈な個性、存在感というものはさほど感じないわけです。直接音そのものは引き込まれるような静けさと理性的で説得力のある語り口なのですが、音と音の間、響の広がりに目に見えない霊感を揺さぶるようなオーラのグラデーションがあるかというと、何処となく寂しい感じがする。。。彼の解釈は控えめで現代的で譜面に誠実ではあっても、はっきり言ってショパン弾き的ではないと思う。(見た目ショパンに似てるとか言われると思うので敢えて諫言。) だから、最初コンクールをライブ録音を聴いた際、過去の優勝者のような天才的な凄い個性を期待していた僕は、むぅ、、、という感じでスルーしてしまったわけです。

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とは云え、ショパン弾きとして限定したり、表現者として外へ向けての広がりという部分ではそんな疑問もあるのですけれど、コンサートピアニストとか、職業音楽家としての表現力とかそういう華美な舞台性を廃して聴いた場合、もっとこう、一人の青年の音楽になんの虚飾もなく対峙して耳を傾けたいと思った時、彼の音楽はとても純粋で、そして静かなのです。雪の降る冬の静かな夜に小音量で聴くにはうってつけの演奏。外界の喧噪に吹き込まれた色々なノイズ、喧噪やなにから心が解き放たれ、魂が洗われます。今時これだけピュアな音を聴かせてくれる若者がいるだけでも貴重なのかも知れない。願わくばラファウにはこれからもこの純粋さが失われずにいて欲しい、今の世の中それが一番難しいのですけれど、儚いことではあるのですが、一リスナーとしてずっとそうあって欲しいと願うのです。その後発売されたリサイタルライブ盤は聴いてないのですが、、、聴いた方が良いかしら?

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