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今回は書斎のサブシステムAに新採用したSimaudio Moon Neo 220iの性能を引き出すことを目指し、手持ちのオーディオ用インシュレーターのオーディションに挑戦してみます。

オーディオ インシュレーター

サブシステムAの機材とスピーカーを載せているオーディオラックもとい単なる簡易チェストですが、天板は安物のパーチクルーボード材。経年劣化でいい加減反ってきていますので、近い将来、集成材の一枚板にまるっと組替えるつもりですけれど、とりあえずプリメインアンプを載せる部分のみ、オーディオボードとして後述する逸品館AIRBOWの白いコーリアンボード (350×450mm×12mm厚) を敷いています。ちなみに北米のオーディオショウでは、Simaudio Moon 製品のデモにNORDOSTの三角コーンスパイク型インシュレーターSort Konesと同社のオーディオケーブルが使われているケースを良く見かけます。

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AIRBOW コーリアンボード 12mm厚

toppage Simaudio Moon Neo 220i
Simaudio Moon Neo 220i

コーリアンボードは人口大理石と呼ばれる物で、元々はポリエステル系の樹脂に無機物を混ぜて造られた建築用の建材です。聴感上は樹脂と云うよりは石に近く、硬質でマットな感じの音質傾向。但し天然御影石のようにわんわん響きが乗るタイプではありません。AIRBOWのコーリアンボードはカラーボックスなどの低密度パーチクルボード直置きよりは流石に良く、そのままプリメインアンプを載せても最低限の音質は出せます。けれどもあくまでこれは建築素材からの転用ですので、ダンピング特性に優れた特殊素材や積層構造等で作り込まれた上質なオーディオ専用ボード、或いは響きの良い木材を使った高密度な集成材等と比べると、やや見劣り(耳劣り)するのも事実。

性能に比して価格が安いのと、インテリアの都合で白いボードが合うとの理由から、これまでずっとAIRBOWのコーリアンボードを使ってきました。

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高品位なオーディオボードはインシュレーターを使わなくても(むしろ使わない方が)音質的に良かったりするのですが、人工コーリアンボードに機材を載せる場合には、何らかのインシュレーターを咬ませる方がより望ましいと思っています。実際、Simaudio Moon Neo 220iにしても、これまで載せていたONKYO A-1VLにしても、コーリアンボード直置きでの音質は可も無く不可も無いもので、インシュレーターを使った更なる音質的底上げの必要性をどうしても感じてしまうものでした。

そこで、今回は手持ちのインシュレーターの中から、新たにMoon Neo 220iとマッチングが取れそうな17種類のインシュレーターを一通りオーディションしてみることにしました。尚、Simaudio Moon Neo 220iはアルミニウム製の底板がそのままパワートランジスタのヒートシンクを兼ねる構造のため、独立した櫛形ヒートシンクを持つ一般的な他のアンプに比べ、よりインシュレーターの音質的影響が出やすい構造になっています。今回テストでは、純正足よりも高さのあるインシュレーターは前2点後1点の3点支持。薄いタイプは純正足の下に4点支持でそのまま敷く形で比較しています。あくまで土台となるコーリアンボードのキャラクター+インシュレーターでの音質評価ですので、組み合わせる機器の個性やアンダーボード(オーディオラック)の素材次第で、相性の良し悪しと結果が大きく変わる可能性がある点はご留意下さい。

尚、今更ですがメーカー提供品等は一切無く、全て自前でこつこつ集めたインシュレーターです。良く見かける大手ランキングサイトのこたつ記事 (実使用経験無しのデタラメ解説と広告目的で構成された比較レビュー) ではありません

★点数評価は5点満点。コーリアンボード直置きでの音質「★★☆2.5点」を便宜的な中央値とした相対評価となります。評価者は「箱庭的 AUDIO STYLE」管理人1人の主観であり、設置環境や機材が変われば評価点は自ずと変わります。各製品の絶対的品質を反映する評価では無く、あくまで今回のテスト条件のみでの狭義の評価点であり、それ以上でもそれ以下でも無い事はお断りしておきます

直置き (アンプ純正のインシュレーター) ★★☆ 2.5点

Simaudio Moon Neo 220iに元々取り付けられているインシュレーターのみ4点支持。裏返したことが無いので具体的な素材は不明ですが、触った感じは樹脂系のインシュレーターです。Φ4.5mm、目視で高さ7~8mmくらい。底面には硬質ウレタンスポンジ(推測)っぽい何らかの滑り止め素材が貼られた二重構造になっています。

Simaudio Moon Neo 220i 逸品館 AIRBOW コーリアンボード
Simaudio Moon Neo 220i

独特の音場の広さ、安定感と共に、不思議と筐体剛性感が落ちたような緩さがあり、やや雑味が感じられるのが欠点。高域方向の神経質さについても、後述する社外インシュレーターを噛ませる場合と比較して最も強く出る印象。コストの制約が出る部分にしろ、オリジナルのインシュレーターはそのままでSimaudioが意図するサウンドに最も近いであろう音質であり、この付属インシュレーター込みでチューニングされている点を考慮すると、社外品インシュレーターの使用で必ずしも音質が良くなるわけでは無いのがポイントです。この点は他のオーディオコンポーネントでも多くの場合に当てはまる話ですので、社外インシュレーターの導入後に違和感を感じる場合には、都度外してみる事をお薦めします。

AIRBOW WOOD-BOY ★★★ 3点

最初に試したのが逸品館のAIRBOW WOOD-BOY。高域方向の情報量が増し、元々良好なMoon Neo 220iの定位感が更にシャープ且つ繊細に。低域は軽くなる方向性ですが、普通のスピーカーと組み合わせると重低音域がドスドスと出過ぎる傾向のあるアンプですので、バランスが取れるかな~?と推測…。とは云え組み合わせるスピーカーが密閉型の超小型ブックシェルフaudiopro Image12の場合、元々のスピーカーが持つ低域の量的限界が浅いため、低域方向が思った以上に軽くなってしまいました。

AIRBOW WOOD-BOY コーリアンボード Simaudio Moon Neo 220i
AIRBOW WOOD-BOY レビュー

加えて音場全体が曖昧且つ優しく溶けた感じになり、明るいレンズの開放で背景をボカしているような雰囲気に。音の当たりが全体的に過度にマイルドになることで、アンプとスピーカーの本来の音質的な実力をスポイルしてしまう印象は否めず。インシュレーターとしての採用は見送りですが、アフリカ黒檀は響きの良い素材ですので、いくつかアンプの天板に載せると、それだけで繊細感が増して何気に音質が良くなります…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡

audio-technica AT6098 ★★ 2点

Simaudio Moon Neo 220i

次に試したのが先日ディスコンになったaudio-technica AT6098、前2点後1点の3点支持。実は長年AIRBOW コーリアンボードとONKYO A-1VLの間に敷いていた組み合わせがAT6098の3点支持でした。真鍮素材らしい明るさと、ぬるっとした滑らかさに中域の密度感が加わり、且つ気になる中高域のカンカンとした圧迫感がかなり抑えられるために耳当たりは良好。最初、思っていたよりもMoon Neo 220iとの相性が良く聞こえて、おおっ!ONKYO A-1VLと同じでOK!?となったのですが、丸一日経過するとハネナイトが馴染み、なんだか響きの足りないデッドでつまらない音質に。。。と云う事で敢え無く採用見送りです..( ³△³  ).。o

Audio Replas OPT-1 HR ★☆ 1.5点

Audio Replas OPT-1 HR インシュレーター

Audio Replas OPT-1 HRは、CREEK Evolution CDMARANTZ CD-R630CI AUDIO VDA-VAC1等々の下にも入れている、管理人お気に入りのハイエンドインシュレーター。素材は人工水晶で、僕の中ではCDプレーヤーやDACの下に使うインシュレーターの切り札的な扱いです。オークション等で、ぱっと見で類似のインシュレーターがより安価に手に入りますので比較してみたことがあるのですが、Audio Replasの製品群とは音質傾向が違い、正直比較になりませんでした。一言で人工水晶とは云っても製造元によってそれぞれ音質が違うと思われますので、あくまで僕が試したとある製品は…の話ではありますけれども。

オーディオリプラスの水晶素材らしく、上品な透明感と高域の繊細性が際立ちますが、Moon Neo 220iに入れてみると何故か音像が太めで、他の機器との組み合わせではこれまで感じたことの無い、コリコリッとした骨っぽい感触が耳に付きます。OPT-1 HRを他の機器で使う場合は基本的に響きが多く音場も広くなるはずなのですけれど、今回は何故か中へ中へと凝縮感が出てしまい空間の広がりが足りません・・・。組み合わせの相性が良くないパターンでしょうか…。中高域の圧迫感はそれ程でも無いように感じたのですが、直後に聴いた(耳に残った)テレビの音に違和感を覚えたので採用は見送り。これ以上更に買い足すのはお財布に痛すぎますので、ある意味良かったのか..( ̄▽ ̄;)

audio-technica AT6099 ★★★★ 4点

スピーカーのaudiopro Image12側が長年オーディオテクニカ AT6099の3点支持ですので、アンプにまでAT6099を入れるのは正直どうか~?と思わなくもありませんが、とりあえずテストですので全ての可能性を確認しておきます。

audio-technica AT6099 インシュレーター
audio-technica AT6099 インシュレーター

まずOPT-1に比べて耳当たりが良く高域の圧迫感は殆ど感じなくなります。ソルボセインの柔らかさが支配的な印象。AT6099は一個あたりかなり質量がありますが、真鍮素材のぬめっとした固有の音色は意外にも小さいAT6098程は目立たず。表現は明るく動的でチャーミングですが、細かな音は整理される印象。音の動き、抑揚が大きくなるぶん空間も広め。定位はどちらかと云うとピンポイントに近く思ったほど膨らみませんが、輪郭はなだらか。数日このまま置くと印象が変わると思いますが、とりあえず設置初期の印象はこんな感じです。

ただ、Moon Neo 220iの持つソリッドな厳格さや影の深さとは対極の陽気なサウンド傾向になるため、聴き易いは聴き易いのですけれど、敢えてこのアンプに使うか?みたいな勿体なさを少々感じてしまうのもまた事実・・・。とりあえず音楽を過不足無く楽しむには優秀。但し機器を活かす形でシステムのポテンシャルを引き出すには力不足みたいな感じでしょうか。。。

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数日後…当初は違和感もあったAT6099ですが、数日馴染ませると思ったよりも相性が良く、AT6098とは違ってこれはこれでAT6099をずっと使い続けるのもこれはこれでアリかな?と思わせる音調に落ち着きました。Moon Neo 220iにやや欠けている柔らかさと動的な音楽性が加味された上で、ナチュラルさ、滑らかさ、高域の圧迫感の少なさが魅力です。その反面、Moon Neo 220iの本来の持ち味である厳格な奥行き方向への描写力、精度の高さみたいなディテールが曖昧になってしまう面があり、程々のバランス感で妥協する為のインシュレーターとの印象は払拭出来ず。

Zigsow DC-mini ★★ 2点

いつの間にか消えてしまった国産のオーディオアクセサリーブランド Zigsaw が以前に発売していたナイロン製のインシュレーター DC-mini。先端が角度の緩いスパイク形状で点接点。接点部分を下にして3点セッティング。

Zigsow DC-mini インシュレーター

Zigsow DC-miniはバランスが腰高になるのと中域の音色に硬質ナイロン独特の妙な滲み感が出るためこれまで使っていませんでしたが、ものは試し。やや腰高のフラットバランスですが、定位感はシャープでピンポイント。高域方向の圧迫感が驚いたことに全く出ないのが最大のメリット。間接音成分は整理される方向。思ったより聴きやすく悪くありませんが、生気がやや削がれるのと、音場のサイズと共に音楽表現がかなりこぢんまりとしてしまう印象。腰高なため、Simaudio Moon Neo 220iの持つ低域方向の重厚感が活かされにくくなるのも欠点。。。音色もやや単調でモノトーン。

audio-technica AT6089CK ★★★ 3点

一斉にディスコンになったaudio-technicaの低価格インシュレーターの中でも個人的に一番好きなモデルがAT6089CK。Simaudio Moon Neo 220iで使うにはいささかローエンドな気もしますけれど、こちらも試してみます。

AT6089CKらしく響きの多い明るく滑らかなサウンドで、雑味が無く音調としてはやはり好み。音場の奥行きはやや浅くなる傾向。問題は(純正インシュレーターよりはマシですが、)高域方向にMoon Neo 220iが元々内包している神経質さが出てくるため、中高域の圧迫感対策には不十分な印象。また、低域の厚みについても可も無く不可も無い中途半端なイメージ。全体にアンプの性能をしっかりと引き出すと云うよりは、バランス良く無難にまとめる印象です。

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Acoustic Revive ヒッコリーキューブHQ-4 + QR-8 ★★★★ 3.5点

こちらは別ページにまとめました。

Acoustic Revive RKI-5005 ★★★★ 4点

Φ50mm。純正足の下に4点支持で。明るくメリハリがあり、解像感にも優れ、硬質感は無いのに適度な輪郭感と密度感の高い音像。音楽表現もポジティブ。特に薄らとテンションを伴う中域~中高域方向は魅力的。中高域がシャープなのに刺さりにくい。低域方向のクオリティは(このシステムでは)ごく普通、ニュートラル。個人的に明るい音色が好きなのもあり、この明るさと上方向への爽やかさは、総じて音色が暗めのJ1 projectでは得られない傾向。同様に、Simaudioが元々持つ暗めのトーンがRKI-5005で一気に日が射したように払拭されます。間接音が少し整理されて控えめになるのと、シリコンの質感からくる僅かなアタックの鈍さをどう料理するかですが、単一素材ながらチューニングセンスが良く、トータルバランスに優れたインシュレーターだと思います。

J1 project P7708-J4P ★★☆ 2.5点

J1 project P7708-J4P インシュレーター ハイポリマーダンピングブロック

ハイテク高分子複合材(ハイポリマー)素材、ICPコンポジットを使ったJ1 projectのインシュレーターの中でも最上位モデル(スパイク系除く)。管理人が愛用している電源ボックスJ1 project PT-4はこの素材を上下にアルミブロックをサンドした構造。また同一素材でより大きいタイプとなるオーディオボードやオーディオラックも過去に存在しました。純正足をそのまま活かす形の4点支持でテスト。

J1 project P7708-J4Pが持つ振動吸収能力の高さは、裏を返せば効き目が強すぎてしまい使いどころが難しいのですけれど、やはりMoon Neo 220iでもその傾向は顕著。背景の沈み込みが殊更深くなり、リッチな低域、中域はナチュラルで程々の肉付き、S/N感に優れ静かな音質が特徴ですが、高域方向は音数が整理される傾向。立ち上がりはマイルド。エネルギーをやや吸われてしまう為、オーバードライブ気味のアンプには効果的ですが、システムバランスがパッシブ傾向の場合、音楽の流れが抑制されてデッドになってしまいます。このバランスを取るのが難しい…(その点PT-4は本当に良く出来ている)。何故か純正足の弱点がやや強調される傾向のため、カバーする意味では相性面でイマイチか。。。

J1 project P50D-J ★★★★☆ 4.5点

P7708-J同様ハイテク高分子複合材(ハイポリマー)素材、ICPコンポジットですが、こちらの方がより硬質で、ICPスパイク/スパイク受けの素材に近い印象。プラスチックっぽい質感ですが、碁石のような硬質感が特徴で、弾くように2枚をぶつけると良い音がします。Φ50mm。Moon Neo 220iの純正足をそのまま活かす形での4点支持。ちなみに同一素材で小型のP35D-Jを、サブシステムCのプリメインアンプEMF Sequel2の下に敷いています。

J1 project P50D-J ICPコンポジット インシュレーター

P7708-Jに対し、P50D-Jは打って変わってタイトで響きが多く高域方向がデッドにならず適度にクローズアップされる音質傾向。音場は奥行きが深く、束縛感や外連味の無い素直でストレートなサウンドです。ピアニッシモ方向へ深淵を覗き込むようなエレガントな深い響き。この高域方向は繊細で魅力的な音色感ですが、カンカンと響く感じでMoon Neo 220iが持つ中高域の圧迫感が少し残ってしまうのが残念。この点ではA50R-Jに軍配。中域はややモノトーン気味ですが明るく躍動的。低域方向へは解像感が高くフラット。アタックのスピード感もあり、P7708-JよりもMoon Neo 220i純正足との相性は遙かに良ざけ。正直合うとは思っていなかったのでかなり意外な結果です。

ただ、インシュレーターとしては付帯音が多く、良くも悪くもプラスチッキーな響きが垣間見える面がありますので、その部分を許容できるかが鍵になるタイプではあります。また、単一の硬質素材ですので、純正足が持つ音の雑味をキャンセルする方向には流石に働きません。総じて音質的な相性はかなり良好ですけれど、Moon Neo 220iとA50R-J/4Pとの相性には一歩届かない感じでしょうか。

J1 project A50R-J ★★★★★ 5点

J1 project A50R-J IDSコンポジット マテリアルA インシュレーター b

IDSコンポジット マテリアルAと呼ばれる青色のソフト系マテリアル。P50D-Jよりも柔らかい素材ですが、クリスプな感触で、機器の重量で変型するほどの柔らかさではありません。こちらも2枚で互いを叩くように弾くと良い音がします。P7708-Jに比べて明るい音色で立ち上がりのスピード感がありシャープ。ほんのりとした適度な艶とハリがあり滑やかな音色。後述するP50D-Jよりも高域方向の強調感が無く、帯域がフラットで音場スケールも大きめ。S/N感と引き換えに響きと音数が多少整理される傾向はありますが、問題の中高域の圧迫感はほぼ完全に解消され、この点は素晴らしい効果。全域でオーディオ的な歪み感を適度にリムーブしてくれる質の良いインシュレーターです。素材のキャラクターが全く無いわけではありませんが、素の楽器の音色がインシュレーターのキャラクターで変にマスキングされない為、非常に好印象。今回紹介するJ1 projectのインシュレーターの中でも、キャラクターの強さではRKI-5005、P7708-J、P50D-Jに少し劣るのですが、そのぶん色付け的に付加されるデメリットが少なく、何気に最もバランスが良く色々な場所で扱いやすいインシュレーターに感じます。

Pro-Ject DAC Box DS + J1 project A40R-J IDSコンポジット マテリアルA インシュレーター

同一素材でサイズの小さな「A25R-J」「 A-35R-J」「 A-40R 」があり、A-40Rを今回のテストでMoon Neo 220iの天板に載せているDAC、Pro-Ject Head Box DSと、別システムのPro-Ject DAC Box DSに使っています。音質傾向はA50R-Jと全く同じですが、A40Rの方は音場が一回り小さくなります。また、同じA-40Rで、2010年代後半に購入した日本製のA50R-JとA40-Rは全く同じ素材ですが、20年以上前のJ1 project 米国製時代のものはやや厚みが薄く、IDSコンポジット マテリアルAの素材感も若干異なり、それに伴い音質も少し違います。米国時代の製造品は、より音色が多彩なもののインシュレーターとしての効果は弱め。国産品はよりダンピング効果が強く出る傾向ですが、素材の癖が少し強まります。アンプとDACを両方とも日本製のIDSコンポジットで揃えてしまうと相乗効果でインシュレーターの個性が強く出過ぎるのですが、アンプ側に日本製、DAC側を米国製にすると丁度良い塩梅になりました。

個性の強い素材は質量を大きくすると比例してデメリットもより目立つものですが、そもそも癖の強いタイプではありませんので、体積が倍ほどあるA50R-Jの方が、IDSコンポジットがもたらす音質的なメリットをより強く感じられると思います。

Inakustik H-Gel EX-ABSORBER 透明ジェルパッド (ソフト) ★★★☆ 3.5点

実は今回の本命はInakustik H-Gel EX-ABSORBER。Simaudio Moon Neo 220iをメインシステムで使用していた際に一番相性が良かったのが上位モデルのRF-ABSORBER(黒ジェル/ハード)だったのですが、手持ちのRF-ABSORBERは、現在メインシステムのAUDIOLAB 8300AとONKYO C-S5VLの下に敷いているため、別途で追加購入したものです。

Inakustik H-Gel EX-ABSORBER パッケージ

先ずは EX-ABSORBERデフォルト付属の透明ジェルで。純正足の下にそのまま4点支持で敷きます。Φ45mmで純正足と全く同じ直径。付属の透明ジェルは一連の付属ジェルの中でも一番柔らかいタイプで、触った感じはRF-ABSORBERのグリーンとほぼ同じ硬度。これまでにも透明及びグリーンは色々な機器で試して来たのですが、これを敷くとかなりソフト傾向の音調になります。特にセッティング直ぐは柔らかさが支配的。耳障りのキツさや中高域の圧迫感は大幅に払拭されますが、ソリッドで厳格な音調のアンプの性能を充分引き出した音調とは云えないと思います。それでもインシュレーター側の支配力が高く、純正足で気になるデメリットはほぼ打ち消してくれるのは美点。

Inakustik H-Gel EX-ABSORBER Simaudio Moon Neo 220i

特に可能性を感じるのは、他のインシュレーターと違って不思議なくらい音楽の流れが捉えやすくなる為、大袈裟に云えば別の演奏かと想えるほど、曲想が頭に染み込むような感覚を得られる点です。f特はフラットでは無く中域が張り出すカマボコ状になりますが、音場は上下左右後方に広く深く展開し、ステージサイズも他のインシュレーターでは得られなかった広いもの。特に低域方向になるほど影響力がより強く、全体としてソフトな響きが支配的ですが、高域方向へはステンレス素材由来のスピード感とアタックの鮮やかさもあり、音質的な傾向としてはジェル7:3ステンレス程のイメージでしょうか。

24時間経過。柔らかさがある程度減退し、それに伴い高低域、両方向の伸びが出てきます。尚、インシュレーターはBlackRavioli等々と同じくソフト素材のため、セッティング初期から数日経過後までの音質変化がかなり大きく、完全に安定するまでには、経験上2~3週間馴染ませる必要を感じます。

Inakustik H-Gel EX-ABSORBER × ジェルパッド 青×2枚 透明×2枚 ★★★ 3点

デフォルトの4枚透明ジェルの状態から、重いトランスがあるアンプの向かって左側の2枚をRF-ABSORBER付属の青ジェルに交換。この異種硬度組み合わせは、メインシステムのAUDIOLAB 8300Aに敷いているRF-ABSORBERと同じです。

Inakustik H-Gel EX-ABSORBER 青ジェルパッド

柔らかさは未だかなり残るものの、上下の帯域が広がり、音圧が上がってエネルギッシュになります。より等身大感が出て手前に向かう迫力が増えたぶん、音像が多少膨らみ気味なのが気になる部分でしょうか。ビアノ線のうなりなど響きの解像度が上がり、トータルでの音質は透明ジェルよりも改善していますが、セッティング初期状態でのバランスは未だイマイチ。これで数日馴染ませてどうなるかと思ったのですが、出音になんだか生理的に気持ち悪い感触があり、程なくして却下。

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Inakustik H-Gel EX-ABSORBER × 青ジェルパッド (ミディアム) ★★★★★ 5点

次に、4枚全て青ジェル(ミディアム)に変更してみます。高域の解像感が更に上がると共に、エネルギッシュに前に出ていた部分が解消され、奥行き方向に深い展開に戻ります。より音数が多くなりリッチなイメージ。ややカマボコバランスながら、音場のスケール感と前後の深さ、エネルギーバランスの面でも透明4枚/2種混合よりも、青4枚で揃える方が良好。

Inakustik H-Gel RF-ABSORBER ジェルパッド

但し高域はステンレスのキャラクターがより顔を出したメタリック基調になるため、Moon Neo 220iが持つ高域方向の神経質さが十分にキャンセルされず出てきてしまう感じ。それでももセッティング初期状態では、中域~低域方向が未だ気になるくらいソフト調です。但しEX-ABSORBERでのそれは想定内ですので、数日落ち着かせて最終的にどうなるか?

EX-ABSORBER × 青ジェルパッド からP50D-Jに戻す

EX-ABSORBER青4で違和感が払拭できず、此処で再び確認のためにJ1 project P50D-Jに戻してみます。ソフト調ながら音数が多くリッチなイメージのEX-ABSORBに対し、P50D-Jの奥行きを伴う端正且つフラットな音場は、Simaudio Moon Neo 220iが本来持つ、気質的な持ち味をより活かしたストレートな音調と云えます。スッキリしていてP50D-Jの方が正直好み。

Inakustik EX-ABSORBER ジェルパッド青4 J1 インシュレーターproject P50D-J

ただ、EX-ABSORBER青4はあきらかに音数が多くステージも大きくなり、オーディオ的な音質ではより高いレベルのポテンシャルを感じるため、どちらにするかはかなり迷うところです。EX-ABSORBER青4の方がよりインシュレーターの音質的影響力が高く、使用時のメリットとデメリットが両方より強く出る印象。店頭効果的な意味では明らかにEX-ABSORBER青4の方が分かりやすく派手に聴かせる感じです。

再び EX-ABSORBER + RF-ABSORBER付属 青ジェルパッド

Inakustik EX-ABSORBER + RF-ABSORBER BLUE GEL PAD インシュレーター b

純正足との重ね方及びジェル部分の応力が均等になるように前回よりも厳密にセッティング。この効果が案外と覿面で、一回目で感じられたジェルの持つ柔らかさがセッティング当初に比べて気にならなくなりました。こんな感じでAcoustic Revive RKI-5005、J1 project P50D-J/4P、A50R-J/4P、EX-ABSORBER青4を何度かぐるぐると試していたのですが、やはり音質的な向上幅がより大きいのはEX-ABSORBER+青4ジェルパッド。ハイエンド調の磨かれた美音とレンジの広さ、音楽的な抑揚表現の幅とリッチで豊かなエネルギーが両立していて、なかなか派手で魅力的な演出です。

EX-ABSORBER × 青ジェルパッドを3週間馴染ませる

残る高域方向のカンカン響く神経質さでしたが、取り付け後3~4日程度で馴染んでほぼ問題無いレベルまで収束。よって高域の圧迫感は完全解決。しかし更に日数を経過すると、徐々にEX-ABSORBER持つ響きの多さが目立ち始め、その結果、音数が響きでマスキングされる方向にシフトしはじめます。このインシュレーターは取り付け当初が最も柔らかく、日数を経て音質が硬化するのですけれど、低域方向は3週間経っても未だに柔らかさが残っています。ステージが大きく適度な輝き感も乗ってはいるのですが、設置当初に比べて全体的にスピード感が落ちて、どちらかと云うとリラックスしてアンニュイな雰囲気に。。。正直、あれ?これってMoon Neo 220iでドライブしているシステムだっけ?となってしまうくらい、穏やかな音調にシフトしてしまいました。なんかこれでは望んでいる音質と違う・・・。

Inakustik EX-ABSORBER + RF-ABSORBER BLUE GEL PAD インシュレーター

実は以前にMoon Neo 220iをメインシステムで使っていた際、上位モデルのRF-ABSORBERで色々比較した末に、ハードタイプの黒ジェルを選択していたのですが、青ジェルを3週間馴染ませた結論としては、結局サブシステムでも黒ジェルの方が合うような雰囲気。しかし、手持ちの黒ジェル8枚はメインシステムのSACDプレーヤー ONKYO C-S5VLDAC CI AUDIO VDA-2に入れてしまっているため、Moon Neo 220iに回す余剰が無く…( ³△³  ).。o。

AUDIOLAB 8300A インテグレーテッドアンプ + Inakustik RF-ABSORBER インシュレーター

J1 project A-50R-Jをあらためて試します。

EX-ABSORBER青4での違和感が時間経過と共に当初よりも強く感じられたため、ここまで最もバランスが良くデメリットの少なかったJ1 project A-50R-Jに一周回って戻してみました。EX-ABSORBERを入れた時のようなステージが拡張される雰囲気は無くなるものの、フラットバランスに近くなり、Moon Neo 220iが本来持つ音質的特質と辛口の描写、スピード感が戻ってきます。その上でJ1 project A-50R-Jでは高域方向の圧迫感が全く出ません。何よりソースに刻まれた音楽表現がより外連味無くダイレクトに感じられるのはJ1 project A-50R-Jの方。オーディオ的な演出ではEX-ABSORBER×青4に負けますので、ひょっとするとEX-ABSORBER×黒4と比べるとまた結果が変わってしまう可能性が残りますが、ひとまず、J1 project A-50R-Jを今回のオーディションでの最終回答にしたいと思います

J1 project A50R-J IDSコンポジット マテリアルA インシュレーター

ちなみに、同じJ1 projectのP50D-J/4も捨てがたいのですけれども、やや素材のキャラが強いものの、ストレートで束縛感の無い響きが魅力的なP50D-J/4Pに対し、A50R-J/4Pは共振をダンピングして歪みをリムーブするタイプ。音楽と機材への対応力の広さではA50R-J/4Pですけれど、P50D-J/4Pの音質も好きなのですよね。ただ、今回はMoon Neo 220iの持つ中高域の圧迫感をどうコントロール出来るかが課題でしたので、歪み感の低減により効果的なA50R-J/4Pを選択したいと思います。

~まとめ~

今回はサブシステムAのプリメインアンプMoon Neo 220iの性能を引き出す目論見で、17種類ほどのインシュレーターを試しました。本命だったEX-ABSORBERについては次点となる結果でしたが、ここは黒ジェルパッドでの再テストを後日試みた方が良さそう・・・。とは云え、これまでお蔵入りしていたA50R-J/4Pで十分なインシュレーション効果と高域歪みのコントロールが出来る事が判り大収穫。そしてもう一つはJ1 project P50D-Jのポテンシャルを再発見できたことでしょうか。テスト中、DACのPro-Ject Head Box DSはMoon Neo 220iの天板に載せていて、天板とDACの間にはJ1 project A40R (米国製旧タイプ)を敷いていましたが、ここでも色々試してみましたので、いずれ別記事で書いてみたいと思います。

今回のインシュレーターレビューを読んで幾許かの参考にされたい方に、お伝えしたい重要なポイントをひとつ。管理人の場合、購入して使ってみた結果、上手くマッチングが取れなかったインシュレーターやアクセサリー等々は色々あるのですけれど、大半はそのまま保管していて滅多な事では手放しません。その理由は、将来、新たな機材でのセッティングとチューニングが必要になった際、組み合わせの選択肢を多く持っておきたいからです。

インシュレーター及び各種オーディオアクセサリーは、機材とその組み合わせ、部屋や電源も含めた環境次第で、ベターな組み合わせ、相性が無限に変わります。即ち、どんな環境でも絶対に好結果が得られるインシュレーターやオーディオアクセサリーは殆ど存在しませんし、またあらゆる環境下で駄目な製品というのも、それはそれでレアケースでしょう。

個人的にここで紹介した製品から単体として1番好きな音色のインシュレーターがどれかと問われたら、実は人工水晶のAudio Replas OPT-1 HRです。けれども組み合わせの評価として今回の条件に限っては最低点でした。オーディオマニアはつい1つの環境に於ける結果だけを見て機材や製品の良し悪しを断定的に判断しがちですけれど、ダメだと思っていた機材やアクセサリーが、全く別の環境、或いは開発者が想定していた機材では素晴らしい音質を奏でてくれたりもするのがオーディオの奥深さです。

僕自身も含め、ユーザーの多くは、そもそもそれぞれの機材やアクセサリの作り手が想定した音質を引き出せていない可能性が高いことを自覚しつつ、謙虚な姿勢でオーディオ機器と向き合えば、目の前で主観的に良い音が出ていないように聞こえてしまう場合でも、特定の製品を安易に全否定するような轍を踏まずに済みます。判断を保留できる客観的視点を常に持つことで、これまでに手に入れた、出会った機材やアクセサリーへの受け止め方が変わり、より良い音質に辿り着く為のヒントを見逃さない柔軟性を持つ事が出来る様になるのではと思っております。

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