カザルスホール、来年3月に幕 室内楽の殿堂
カザルスホール閉館へ 愛された人肌の室内楽
国宝級建築物の運命:カザルスホール閉館に思う
カザルスホールが!?

 日本を代表する室内楽の殿堂、東京・お茶の水の日本大学カザルスホールが来年3月で閉館することが分かった。日大キャンパスの再開発計画に伴うもの。風情のある建物や文化財級のパイプオルガンがどうなるのかは未定だが、音楽ホールとしての歴史は事実上幕を閉じることになる。
 同ホールは87年、チェロの巨匠パブロ・カザルスの名を冠し、日本初の本格的な室内楽ホールとして主婦の友社によって建設された。当時は華やかな大ホールが注目を集めたバブル期だったが、511席という親密な空間と優れた音響で、ロストロポービチや内田光子ら内外の一流アーティストにも愛された。

カザルスホール

このニュースを読んだとき、私は全身の血の気がひいていくのを感じた・・・・・・・・
東京お茶の水のカザルスホール。それは私の青春の中心にあったコンサートホールだった。500席少々の小さな室内楽専用ホール。1987年に建築家の磯崎新氏の手により誕生し、世界平和を歌えたチェリスト、パブロ・カザルスの名を冠し、ミェチスラフ・ホルショフスキーによるピアノリサイタルが開かれた。比較的新しいホールだけれども、東京近郊で、私の知る限り一番音の良い、一番格調高い、本物の響きのする室内楽ホールだった。内装も楽屋も外装も含めて、まるで100年の歴史があるかような雰囲気ある作り。この後東京にはいくつも似たような室内楽用ホールが出来たけれど、どれもカザルスホールと比べると、音の響きが普通だったり、内装の木材がどうにも安っぽかったり、何かが物足りなかった。
ミエチスラフ・ホルショフスキー・カザルス・ホール・ライヴ1987
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ホルショフスキー_カザルスホールライヴ1987当時100歳近かったポーランドのピアニスト、ホルショフスキーの名演。箱庭管理人が所有しているのは1987年当時発売(正確には1988年)されたファンハウスの旧盤で、カザルスホールで収録された数少ないCDの一つ。このホール独特の澄んだ"たゆたう"音色と、ここにあった、綿にくるんだ鈴音を想わせる独特の音色のスタインウェイが良質な音で収録されています。↑はRCA再販盤2枚組。カザルスホールの音が試聴できます。1枚組だったファンハウス盤と違いカット曲やアンコール含めての全曲収録みなんですね。プレスによる音質の違いも含めて是非とも手に入れたいCDです♪


80年代末から90年代、カザルスホールで多くの世界的演奏家がリサイタルを開いた。ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、室内アンサンブル・・・等々、カザルスホール特有の滞空時間が極めて長く冷たく澄んだホールトーン・・・これはこのホールだけの唯一無二の個性であり、また小音量の室内楽を楽しむために最適化された特異点のような空間だった。個人的な話で恐縮でだが、私がステージで演奏する彼女に初めて大きな薔薇の花束を手渡したのも、アンコール演奏を終え、興奮して楽屋に戻ってくる姿を受け止め、抱きしめたのもこのホールだった。演奏会の間、お辞儀の際に彼女がこちらばかり見ていたものだから、遂に隣の客席にいたご婦人にお知り合いですか?と声を掛けられたりもした。他にも思い出は色々ある。オーフラ・ハーノイの花のように舞うストラディバリのチェロ、ミラ・ゲオルギエヴァの奏でるフランチェスコ・ルジェーリの響き等々、今でも私が愛して止まない、海外の、その当時若手の演奏家の幾人かはこのホールでの演奏が最初の出会いだった。
オーフラハーノイ・LDオーフラ・ハーノイのカザルスホールでのリサイタル映像LD(サイン入り)。Nと花束を持って行ったりしたなぁ。。。天使と魔女を足して二で割ったような凄い美人@ぐらまぁなおねぇさんで背筋が震えたのを覚えてます(笑)


あのころ来日演奏家による小ホールでのリサイタルがあると、音は良いけれどチケット代が少しだけ高いカザルスホールを選んだものだ。何故ってピアニッシモが際立つ響きの良いカザルスホールでの演奏は、他のありきたりなコンサートホールよりも不思議なほど良い演奏を聴けることが多かったからだ。そう、私にとっての夢の中のような思い出、青春時代が詰まったコンサートホールがカザルスホールだった。
愛のあいさつ〜チェロによるロマンティック

2002年、親会社である主婦の友社の経営難からカザルスホールを手放さざるを得なくなり、カザルスホールを含むお茶の水スクエアの土地所有権が日本大学に移管された。そして名称も日本大学カザルスホールとなった。世界的名チェリストであるカザルスという名の前に大学名を冠するという冒涜とも取れる行為に一瞬目眩がしたけれど、少なくとも文化財としてカザルスホールの価値を解ってくれる大学が保護してくれるなら、そういう事もありなのだろう、そんな風にも考えていた。ただ事はそう単純でもなかったのだろう。日本大学カザルスホールでは、程なくして通常の音楽マネジメントを経由する、来日演奏家による興業公演が殆ど行われなくなった。そう、何故か行われなくなった。いつしかホールが使われない日も多くなり、公演がある場合も、国内の演奏家や、小イベント、アマチュア、セミプロの発表会活動の場として、地方公民館の如く使われることばかりが目ついた。そして聴衆はめぼしい花形公演を失ったカザルスホールからいつしか離れていった。かくいう私も気が付けば日本大学の名を冠したカザルスホールへは一度も足を踏み入れていない。

そして去る2009年2月4日、日本大学から正式にカザルスホール閉館のリリースが出た。

日本大学カザルスホールの使用停止について

 本学は、このたび懸案事項でありましたお茶の水キャンパス再開発計画の策定に着手するに当たり、同キャンパスに所在する日本大学カザルスホールの貸し出しを含む使用を、平成22年3月31日をもちまして停止することといたしました。
 平成14年に本学が同ホールを教学上の施策として取得以来,学外の皆様にもコンサート専用ホールとしてご利用いただいてまいりました。同ホールへのご愛顧に対し、衷心より感謝申し上げます。
 また、同ホールの使用停止に伴い、平成22年4月以降のご利用をご検討いただいておりました皆様には、ご迷惑をおかけすることとなりますが、ご理解賜りますようお願い申し上げます。


カザルスホールが門外漢である日大の手に渡った次点で、いつかこんな事になるんじゃないかと懸念された方は多いと思う。事実能動的なイベント企画が出来なくなった日大カザルスホールは、7年間に渡り実質的に宝の持ち腐れ状態だった。クラシックも知らない、楽器演奏の経験もない成金が、金があるからとストラディバリウスやガルネリ・デル・ジェスのヴァイオリンを買い集めて私物化し、死蔵させているのと一体何が違うのだろう。いや、アマチュアにたまに触られているから良いだろうとでも彼らは考えていたのだろうか?

武久源造/オルガンの銘器を訪ねてVol.1〜カザルスホール

クラシック音楽ファンの立場からすると、カザルスホールはその存在自体が楽器であり文化だ。私個人としての思い入れだけでなく、傑作ホールの唯一無二の音質や、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの遺した西洋建築など、むしろ国や地方自治体が保護すべき重要文化財だとさえ思う。コンサートホールの設計は同じ事をした所で決して同じ音にはならない。その存在自体が奇跡であり唯一無二のものであり、近代的に建て替えれば済むとか、そんな即物的で安っぽい話ではない。その固有の響き、公演の記録、積み重ねた歴史、そして後にホールと一体に設計されたユルゲン・アーレント制作のパイプオルガンも含めて、建物全てが楽器の一部であり音楽文化なのだ。どこかの地方都市にある、音響とも呼べないような適当な作りの華も何もない多目的ホールを奇麗に建て替えますって話とは訳が違う。第一今後数百年立て替えの必用が無い程カザルスホールは美しい。「カザルスホールは公演も少ないし文化芸術なんて本当のところ興味もないし理解したくもないしお金が掛かって邪魔だから壊します。」そこには音楽と芸術文化、それに関わる人々への理解や尊敬の念が微塵も感じられない気がするのは私だけだろうか?
iconiconカザルス/鳥の歌−ホワイトハウス・コンサートicon

カザルスという名前を戴いた責任をどう考えているのだろう? そもそもカザルスホールがここ数年敬遠されてきた理由は何だったのだろうか?この話を海外の文化人、このホールの音を知っている数多くの演奏家達が知ったらどう思うだろう?日本人の、音楽に対する認識がその程度のものであり、どれだけ文化芸術に大して浅薄且つ無理解かを、世界中の知識層へ恥と共に垂れ流す格好の機会となる事さえ思い至らないのだろうか?呆れるというよりもはやある種の脱力感と嘆かわしさだけが残る。
お茶の水は文化の町だった筈だ。カザルスホールのような存在を大切に保存し、正しく運営し、良い演奏者を招き入れ、日々のコンサートの歴史を十年また十年と積み重ねていく、それこそが歴史という掛け替えのない文化であり、文化を担いつつ日本を代表する教育機関に与えられた本来の使命だったのではないのだろうか?近代建築の新校舎がもたらす目先の虚栄心と繁栄は、数十年後、カザルスホールのもたらす伝統文化の威厳に太刀打ちできるのだろうか?

とにかくどうにかしてホールを存続させ救済する方法はないのだろうか。石原東京都知事はこの横暴についてどう考えているのだろうか?いつの日か、ふたたび上質な演奏会を数多くカザルスホールで享受できる日を夢見ていたものとして、今回の出来事は本当に身を切られる思いだ。
(2009年2月8日友人の弦楽器奏者N氏による寄稿。了承の上、管理人による加筆修正及びリンクと画像追加しました)
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