SILTECH(シルテック)の銀導体スピーカーケーブルを導入しました♪

先日ちょっとだけ触れましたが、12月末箱ピュア管理人はメインシステム用に新しいスピーカーケーブルを購入しました。メーカーは銀線ケーブルで知られるオランダのSILTECH。モデルはFT-12G3。1.5mペアで定価158000円。シルテック第三世代に当たる純銀/純金の混合導体が使用されているモデルで、既に製造終了となってしまった型落ちの超高級ハイエンドケーブルです。数年前に旧ヤマギワ東京本店のLIVINADIOで試聴た際その音質に感激してしまい、それからずっと欲しい欲しいと思っていたのですが、当時は高くてさすがに手が届かず。

FT-12G3その後暫くしてSILTECHの代理店はハーマン・インターナショナルに移管されたのですけれども、前代理店のニコル・マーケティングさんには、移管前の旧モデルの在庫が現在も少しだけ残っていて、代理店変更後も細々とサイト上で販売されていました。とはいえそろそろ在庫が無くなりそうな雰囲気でしたので、このたび清水の舞台を飛び降りるつもりでSILTECH FT-12G3を購入してしまいました。

SILTECH FT-12G3 CAN

届いたスピーカーケーブルは、映画フィルムの保管用缶ケースのようなものに収められていて、蓋を開けると何故か強烈にクレゾールの匂いがします…。長い間保管されていたのか缶がかなり傷んでいましたが中身は奇麗。シルテック以外にも、同じくオランダの姉妹会社Crystal Cable(SILTECH社長の奥方がCEO)のスピーカーケーブルもフィルム缶に入っているらしいです。

FT-12G3は外観は鮮やかなブルーの被覆の薄いフラットケーブルで、パッと見でハイエンドケーブルに良くある仕上げの重厚感や高級感はあまり感じないのですが、センスの良いインテリアにもマッチする、自己主張や嫌みのないスッキリした印象のデザインです。両端のYラグはWBTでドイツ製。今まで使っていたTAG McLaren F3-10SPK(2mペア53000円)の純正端子よりも成型精度が良く、スピーカー端子側とのコンタクト感が高い印象。なんだかクレゾール臭いのが気にはなりますが、とにかくTAG McLaren 60i(工事中)とVienna Acoustics Mozart T-2との間に繋げ、音出しをしてみます。

第一印象は、とにかく音色が奇麗♪ シルテックのケーブルは最低24時間のエージングが必要ですと注記されていて、初期の音質がイマイチなのは覚悟していましたが、もう最初の一音目から今までとはまるで違うレベルの音場感と音色の透明感。一瞬で勝負が決まり、F3-10SPKが裸足で逃げ出すレベル…。※F3-10SPKはサブシステム用になりました。

TAG McLaren F3-10SPK

今まで使っていた英国TAG McLaren F3-10SPK(工事中)もかなりレベルの高いケーブルには違いなく、少なくとも過去にテストしてきたメーター1000~3000円クラスの切り売りケーブルでは、音色の違いや好き嫌いの差はあれど、情報量や帯域の広さ等でTAG McLarenとは殆ど勝負になりません。この点からも、まともな数万クラスのケーブルは普及価格帯のケーブルとは根本的に何か次元の違う要素があるとは認識していましたが、やっぱりSILTECHクラスになると更に月とスッポンくらい次元が違ってきます。自分のシステムから(今までもそこそこ良いとは思っていたのですが)更にこれだけの音が出てくるのかと驚く反面、裏を返せば今までシステムの持つポテンシャルを全然引き出せていなかった事が、ケーブル一本で此処まで暴露されてしまう。この音を聴いてしまうともう決して後戻りは出来なくなってしまう。。。そんな印象です。

FT-12GⅢの音色はシルバーケーブル特有の明るく輝きのあるもので、ピアノはより本物のピアノらしい輝きに満ち、音場全体がこぼれるような余韻と潤いに満ちています。ボーカル帯域は驚くばかりに艶めかしく、歌い手に触れられるのではないかと錯覚するほどリアル。反面弦楽器は艶やかすぎて倍音が余韻に溶けてしまい幾分嘘くさいかも。

帯域はビックリするほど広いです。マジで腰が抜けるかと思った…。 特に低域方向の解像度の高さとピッチの正確さ、沈み込みの深さが素晴らしい。大音量が出しづらいマンション暮らしという事で今まで低音の音量や音質はあまり気にしてこなかった管理人ですけれども、単純に低域の量感があるのではなく、ボリューム豊かな響きの中で基音がフラット且つ深く沈み込んでいるのです。この結果、今までの廉価なケーブルとは音場の展開そのものがまるで違う、遥かにリアリティのあるステージイメージが得られます。比較すると他のケーブルでは低域の位相がそもそもコントロールできず、量感不足でピッチが浮つき気味か、量感だけで不明瞭なぼやぼやの低域であることが判ります。

Vienna Acoustics Mozart T-2のデュアルバスレフで誇張された低域は、どうやっても位相が混乱気味で半ばスピーカーの設計の問題と諦めていたのですが、どうも良いケーブルを使うと全く問題無く、ピアノの低音弦の震えなども低い方まで明瞭に鳴らすことが出来る事に気付きました。

中域は耳当たりの良い明るい音色で立ち上がりの速さとタッチの自然な丸さを見事に両立しています。相反する要素なのに何故両立できるのか不思議。そして、全帯域にこぼれるような余韻が乗っている。音楽の流れが驚くほど自然でスムーズ。極めて正確な音階とメロディーが豊かな響きを伴い、一音一音丁寧に呼吸をしながら頭の中に染み込むような、「音楽性」をこれほどリアルに感じさせるケーブルを私は今まで聴いたことがありません。

Vienna Acoustics_T-2_FT-12G

音場は前後方向に深く、ピアノのハンマーが横に並んでいる事が知覚でき、左手と右手の微妙な音色の違いをしっかり描き分ける事が可能です。内声部が聴き取りやすくそれぞれの旋律が奇麗に分離して聞こえる為、無意識に音楽のより深い構造部分にまで耳が届くようになります。また低域方向が明瞭でステージが深く沈み込みます。高域の聴感F特は弧を描いてなだらかに減衰する印象で、スキャンスピークのツイーターが不快な金切り声を上げることは皆無。高域が中域とフラットに聞こえる様なオーディオ的不自然さ、即ち高域強調感が無い為、結果として高音域の定位が上方へ分散して飛んでいってしまうような位相の混乱が無く、楽器の位置がぶれずに発音してくれるため、生演奏のステージイメージに非常に近いように感じます。

とはいえ決して高域がぼやけている訳ではなく、ハイエンドに相応しい情報量は当然のように確保されていて、ボーカルのサ行や弦楽器の切れ込みはハイスピードに再現しますが、歪み感が少なく全てを自然に纏めている為、耳当たりがキツくなるようなことは一切ありません。廉価なケーブルではとても聞こえてこないような歌手の衣擦れやホールの暗騒音まで当たり前のように再現しますが、オーディオ的解像度をことさら主張する訳ではない分、シャープネスを上げて立ち上がりと高域の表面だけを強調し、見せかけの情報量を増やしたようなケーブルと比較した場合には、ハイファイ性が物足りないと感じられる人もいるかと思います。

全体としてのステレオイメージが良く、センターの定位がしっかりしています。それも輪郭強調されたクッキリ感ではなく、自然な輪郭の中で、中央定位の密度が気持ち良いほど決まります。スピーカーをレーザーセッターなどで動かした訳でもないのにステレオイメージが大きく向上してしまうのはやや不思議なのですが、ケーブル内部での位相の乱れが元で、ビジュアル的に知覚できるほど音が変化している一つの証拠であると云えるかも知れません。

聴感S/Nと音質全体のまとまりが良く、一つの世界観、統一感でしっかりと構築されていて、夢幻的で甘く優しい豊かな余韻と音の消え際のグラデーションは特段に美しく、オーディオ的な音質面の基本性能について当然のように極めて高い次元でクリアしながらも、それらエレメントのレベルの高さを敢えて意識をさせないほど、高い芸術性と音楽的な表現力を兼ね備えた極めて完成度の高いケーブルだと云えると思います。

正直、このスピーカーケーブルには個人的に文句を付けるところがないです。作り手の音楽の才能が、音楽的感性がたぶん私の音楽的才能を超えています。優れた演奏家のレコードはともかく、作り手の音楽的感受性に疑問を感じることが多いオーディオ機器の音でそんな風に感じることは滅多に無いのですけれどSILTECHの音には嬉しさと共に正直参りました、脱帽です\(^o^)/ありがとうございましたm(__)mとしか言い様がないかも。だからこそ、下手に文句を言うのが烏滸がましいし、このケーブルの音決めをした人は私の感性を上回っているでしょうから、何か苦言を呈したとしても視野狭窄の的ハズレになる可能性が大いにありますから。。。

SILTECH FT-12G3の音にはお金にはかえられない種類の価値があると思います。成金趣味とかではなくて、導入前の音と導入後の音楽性の違いは、そこに音楽が真に生きているか、作り物のステージか?或いは音楽か、それとも単なる音に過ぎないか?という差です。とにかく、全ての音楽で心の揺さぶられ方がまるで違います。これ、私にとってはオーディオ機器選びでなにより重要なポイントですから♪

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音楽性は音質と違って必ずしもお金で買える種類のものではありませんが、本当に音楽性を伝え切れるオーディオ製品とはなかなか出会えないため、それが手に入るならある意味、幾ら払っても惜しくない類の宝物でもあります。今回手に入れたFT-3G3は、久しぶりにその”音楽”を生々しく直接的に感じさせてくれる素晴らしいケーブルでした。そして音質面も価格が価格だけに今まで聴いたことのない高度なレベルに到達しています。

悔しいですが、出来の良いハイエンドケーブルの持つ音はやはり次元が違うと思います。繋げる機器がそのサウンドに相応しくなければ稚拙さを暴いてしまう事にもなりかねませんけれども、逆に云えばこういった優れたハイエンドケーブルを経由しなければ真のポテンシャルを発揮することは出来ないとも云えそう。ケーブルでなければ表現できないとまでは云いませんけれど、同じシステム環境にある限り、廉価なオーディオケーブルを使っていては永遠に報われないであろう世界、音楽の泉が其処にはある。オーディオ、音楽にこだわりを持つ人々にはそういうコダワリの世界がある事を知って欲しいし、少しでも余裕のある人には、是非とも国内外のハイエンドケーブルに積極的にアプローチして貰いたいと思います。高価なケーブルはお金さえあれば買えますが、それらから得られる音楽的感動や経験の素晴らしさは、お金で量るのは無意味なほど貴重であり、掛け替えのない一期一会の人生経験となりうるのですから♪

編集:音元出版
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最後に管理人が高校生くらいから長年定期購読しているオーディオアクセサリー誌97号(2000年夏)に掲載されていた、評論家の福田先生のレビューを転載します。ちなみにFT-3G3については殆ど私の印象と一致します。文面からもう少し緩めの音かと危惧したのですが、抜けが良いぶんソフトなのに分離が良くて混濁感はありません。

”豊かなボリュームを備え滑らか、スピードと潤うニュアンス”
シルテックは純銀導体を特徴とするオランダのケーブルブランド。FT-12G3はフラット構造、実測23×2.5mm。4本並列導体を交互に2本ずつ±に使用する。輪郭の滑らかなレスポンスで、明るく艶のあるインパクトを特徴とし、柔らかくボリュームを豊かに備えた表現に特徴がある。低域はエネルギー密度の柔軟なパワーでスケールが大きく、重低音の伸びが良い。ダンピングや解像度はもう一つの印象があり、切れ味のシャープなタイプではないが、スピードがあって硬さがない。潤いとマイルドな音像感。クオリティは高いが引き締まりや鮮明感を狙うと不満もある。生々しいボーカルの息づかいなど、ニュアンスと抜けの良い表現で不思議なリアリティを持つ。


【評価】
◎ 高音の繊細性・中低音のボリューム・芸術性・音質の柔らかさ・トーンバランス
○ ニュートラリティ・S/N・ナチュラリティ・鮮明感・明快性
△ 写実性・ダンピング

https://www.phileweb.com/
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コメント一覧 (2件)

  • 今回は本当に成功でした(^^)。シルテックのケーブルは極度のヨーロピアントーンで個性の強い物ですので、万人に薦められる物ではありませんが、クラシック音楽を好まれる方なら大抵は感銘を受けると思います。
    先に店頭で試聴してある程度キャラクターを理解していた分、結果的に失敗せずに済みました。このクラスになると試聴をしないではとても怖くて買えませんが、それでも試聴できる機会自体が本当に少ない(汗)。
    経験上、ハイエンド機器の性能を活かせるまともな音のするケーブルは、最低数万円~からだとは思うのですが、好みや機器との相性を外すと洒落にならないのと、市販品は価格と音質が見合わない、作り手の思い込み的な音のするブランドが結構あるので、この辺りの選択が難しいところです。変なケーブル買わされるくらいなら自作の方がマシだと思います。
    構造や導体も大切ですが、所詮素材の原価なんて二束三文。結局は音決めをする人のセンスや感性の比率が大きい。そんな風に聴いてしまうと、SiltechやCrystalCable含め、国際的に定評のあるメーカーの方が結果的にバランス感覚に優れ、間違いが少ないのかなぁと思ったりします。

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