今回は管理人が長年リファレンスとして使っているC.E.C.のベルトドライブCDプレーヤー"TL5100Z"について書いてみたいと思います。

CEC TL-51XR

1996年に発売されたTL5100Zは、日本の老舗レコード機器メーカーC.E.Cと、移民系ドイツ人のエンジニア、カルロス・カンダイアス氏とのコラボレーションから生まれた一体型ベルトドライブCDプレーヤーの初代機です。この後、TL51Z、TL51Z Mk2TL51XZTL51XZと、基本的なデザインコンセプトを維持しながらマイナーチェンジを続け、初代から通算10年を経過した現在でもベストセラーを続けている、未だに人気に翳りを見せない大変完成度の高いCDプレーヤーです。TL5100Zはまさに、当時弱小ブランドでしかなかったCECの知名度と名声を、現代ピュアオーディオの世界で一気に知らしめた製品だと云えるでしょう。

その最大の特徴は、何と言っても世界で唯一CECicon独自のディスク読み取り機構、ベルトドライブ・トランスポートを搭載している点にあります。一般にCDの読み取り方式の殆どは、オーディオ/データ用に関わらず、ダイレクトドライブと呼ばれる中心軸を直接モーターで回転させる手法がとられていますが、CEでは敢えて、同社がアナログプレーヤー時代に築き上げたベルトドライブ技術をデジタル時代の光学式ドライブメカにも採用。モーターと軸受けの間にゴムベルトを介して間接的にディスクを回転させるという手の込んだ手法をCDフォーマットにも応用し、実際にそれを具現化してしまった点にあります。

デジタル信号を文字通り0と1のデータとしてのみ解釈した場合、読み出しトランスポート側に於けるこの様な手法は、ある意味かなり非合理的で無意味とも受け取れる仕掛けではありますが、それはあくまで机上の理屈。それでも敢えてベルトを介するメリットは、物理的・機械的に滑らかなディスク回転が得られる点にあります。ダイレクトドライブを使う限り、どんなに剛性を追求しても逃れられないモーター回りで発生する微細な電気的/機械的震動及びジッターから、CDの回転そのものをほぼ完全にフローティングすることがベルトを介することで初めて可能になったのです。

弱点として、回転重量を増すために大型のスタビライザーが必要になり、ディスクの交換操作に手間が掛かる点。高速回転/急停止が出来ない為、音楽プレーヤー以外への応用が難しい点、アクセス速度が遅い点(現行機では解決)、ドライブメカ自体のコストが高価になってしまう事などが挙げられます。とは云え音質面を比較した場合、CD特有の歪み感が抑えられたどこまでも滑らかなプレゼンスは、ベルトドライブプレーヤーでしか得ることが出来ない唯一無二の特徴になっていて、他のドライブ方式と一線を画す聴感上の魅力は、そういったデメリットを補って余りあると言えるでしょう。個人的にベルトドライブトランスポートは音楽CDプレーヤーの歴史に於いて間違いなく世界最高のメカニズムだと思っています。

beltCEC独自のベルトドライブメカニズムから生み出される音色は、濃く滑らかで、一切のデジタル的な歪みや猥雑感を感じさせず、暖かみとナチュラルなしなやかさに溢れ、開放的でスケールが大きく、特に前後方向の音場がとんでもなく深く(これには驚きます)、更に音の広がりの中で、ホールの高さ方向さえも表現することが可能です。その音場空間はコンサートホール的なプレゼンスのリアリティと音楽的な躍動感に溢れていて、ベルトドライブプレーヤーの演奏の直後に他の一般的なダイレクトドライブ機の音を聴くと、音場が上下左右に箱庭的にこぢんまりと切り取られてしまったかのようにさえ感じられます。こういったプレゼンスの差は、目指した先がデジタル信号の写実的で極めて正確な読み取り能力なのか、それともデータには表れないCDに潜んでいるコンサートホールの空気感、生演奏のライブネスの再現なのか?その立脚点の違いが最終的な音場再現のリアリティの違いとなって現れてるようにも思えます。

ライバルメカとして語られることの多いVRDSメカを、男性的な剛性感を追求したカッチリと精度の高い生真面目なサウンドに例えると、ベルトドライブメカは、その対極にある女性的なしなやかさと、柔らかく血の通った生き生きとした音が特徴になっています。

TL5100Zから繰り出されるナチュラルでスムースな音色は、不思議なことに他のCDプレーヤーでは絶対に聞こえてこない繊細な音色の違いの描き分け、生楽器本来の持つ音色の微妙な差を見事に蘇らせることが出来ます。、ピアノで云えば、スタインウェイでしか絶対に出ない薫り立つ音の余韻、ベーゼンドルファー特有の匂い、弦楽器やギターのモデル固有の音色など、画一化せずにそれぞれの個性の違いを正確に描写できるトランスポートを、今のところ私はベルトドライブプレーヤーの他には知りません。
TL5100Z
オーディオ的な意味での高音質、ハイスピードで高解像度云々なプレーヤーは探せば他にも沢山ありますが、そのような電気的な正確さとは根本的に何か次元の違う、生楽器の真の音色を知っている人程、ベルトドライブでないと納得できなくなるような、リスナーと生演奏の間にある電気的介在物が消え去るが如き説得力をTL5100Zは持っている様に思えます。

私が所有する初期のTL5100Zは、実のところデジタル信号の正確性という意味では廉価なポータブルドライブにも劣ります。現行機では随分改善されているみたいですが、初代TL5100Zの場合をCD-Rのダビング送り出し機として使ったりした場合など、レコーダー側でサンプリングレートコンバータを介在させないと時間軸のロックが出来ず、一定周期で音飛びが発生し、回転がフラフラと揺らいでいるのが聴き取れます。勿論、時間軸を受け側で再構築できる一般的な単体DACや、CEC機同士の接続の場合、CECスーパーリンクを使えば大丈夫ですが、データはあくまで正確で無くてはいけないと考える人々にこれは敬遠される部分だと思います。

とは云え、家庭用オーディオというそもそも精度面で甚だ怪しい電気製品に於いては、音の断片しか表現し得ないカタログスペックよりも、実際に耳で聴いて感じられる音のリアリティ、結果が全てじゃないだろうか?と私は考えるのです。少なくとも、C.E.Cのベルトドライブフレーヤーからは、演奏時に込められたニュアンスがリアルに再現され、演奏者の立場から見ても納得できる、真実味のある楽音が得られます。その音色と比較すると、他の多くのダイレクトドライブ機では聴感上抑揚のない一拍子の音にしか聞こえかったり、音色が終始単色に塗りつぶされていて細部の描き分けが的確に出来ていません。これでは、電気的なオーディオ機器としては優秀でも、弾き手が録音に込めた表現を再生できているのか?という意味で、必ずしも原音再生とは云いがたいと思うのです。
C.E.C TL0X

また、ベルトドライブトランスポートの美点として、長時間聴き続けても耳が疲れないという、再生機器としての非常に重要なメリットがあります。従来の他のCD再生機では当たり前のように感じられる、CD特有の癇に障る歪み感が無いのです。これは毎日長時間音楽に触れている人間には大変重要なポイントです。本当に耳の疲れ方が全然違うんです。音の良さという点では、他にも旧フィリップス/マランツのCDMダイキャストメカの音質も、抑揚の流れが音楽的でとても魅力的なのですが、ベルトドライブ機の疲労感の少なさ、高域方向への歪み感が感じられず、音場がやたらと深くて"静か"という部分では、CEC製品の方がやはり勝っているように感じます。特にCDの音を嫌い、長時間のリスニングでも聴き疲れのしないレコードの音を好まれるアナログファンの方々にも、唯一聴くに耐え得るであろう音質を持ったメカがCECのベルトドライブトランスポート搭載機では無いでしょうか?

また、C.E.C./ベルトドライブiconプレーヤーの音は、音楽的で生演奏を彷彿とさせる音色のリアルさに加え、アナログ段の設計がA級アンプである点も見逃せません。カンダイアス氏によるアナログ段の設計が、アナログ的とも云えるウォームなキャラクターに寄与し、ベルトドライブの持つサウンドに加味されてよりナチュラル感を演出しているように感じます。その点でもアナログ好きの方々にも違和感なく浸れる音に仕上がっていると思いますし、こういったアナログチックなテイスト以外に、ベルトドライブの持つ低歪みなサウンドを生かしながら、より現代的な高音質を得たいと考える場合は、同社のトランスポートに加え、他社の定評あるDAコンバーターを組み合わせるのも良い方法になる筈です。
iconiconCHORD(コード)DAC64mk2icon

私が未だに初代のTL5100Zを未だに使い続けている理由は色々ありますが、マイナーチェンジに伴い音質が洗練されて行く過程で、初代機の持っていた特有の漂うようなゆったり感(たぶんトランスポートの精度が低いため)と、アナログチックな膨らみのある低域の厚み感が若干薄らいだようにも感じられるからです。モデルチェンジの前後を一対一で比較したことがなく、また、店頭で試聴する場合などは最新のモデルでも相変わらずの良く似たアナログ風サウンドですので、本質的にその魅力と音傾向は変わっていないと思うのですが、TL51XZになり、1ビット系DACとは一線を画する多彩な音色が魅力だったバーブラウンPCM1704系(初代はPCM1702)マルチビットD/AコンバーターからNPCのSM5865CMにDACチップが変更された点、初代機は埼玉製(笑)だったが、2代目から生産拠点が中国へ移管されたことなど、音質とは本質的に関係のない趣味性の部分も含めると、なんとなく初代機の作りやデバイスの方により思い入れがあったりします(汗)(2006年最新モデルのTL-51XRiconでは、再びC.E.C DA53と共通のバーブラウン社製DAC・PCM1796^変更。)

国内メーカー製でありながらそのサウンドは全く国産機らしくなく、極めて自然且つアナログ的なふくよかさと音楽性に満ちた、デジタルの弱点を全く感じさせないベルトドライブCDプレーヤー。一度その音の良さに気がついてしまうと、正直なところもう他のダイレクトドライブトランスポートの奏でる音では満足できなくなってしまいます。

上質な生楽器の音、生演奏を実際に体験して知っている人、声の持つ暖かみを大切にする方、クラシックのコンサートやジャズのライブにに足繁く通う人、音質ではなく、音楽性の重要性に気がついていらっしゃる方々、そして、CDを敬遠しているアナログ派の人々、そんな耳の肥えたリスナーにこそお薦めしたい、それがC.E.CのベルトドライブCDプレーヤーなのです。
iconiconC.E.C TL-51XRicon

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