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ゴーストライター新垣隆氏のカミングアウト。佐村河内守氏の事件に思うところ…。

【※2/7 後半大幅に追記しました。】 世間を騒がせておりますね。。。こういう話って心底苦手…正直かなり触れたくない類の話題です。ゴーストライターをしていた新垣隆氏の会見を拝見しました。佐村河内守氏の耳が実は聞こえている件については、1年ほど前にNHK特集の「魂の旋律~音を失った作曲家~」などを観ていて立ち振る舞いに違和感を覚えたのもあり、やっぱりという感じ。ただ事件発覚までまさかゴーストライターが作曲をしていたとまでは全く思いが及びませんでしたけれども。。。

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佐村河内守氏とゴーストライター新垣隆氏

o-green新垣隆さんが会見「著作権は放棄したい」 佐村河内守さんのゴーストライター

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佐村河内守氏が関わったとされる楽曲の出来について、クラシック音楽を良くご存じの皆さんの間では、コラージュとかパッチワークと揶揄されることが多く、実際のところ、マーラーだのブルックナーだのラフマニノフその他諸々をオマージュしていると思われる部分が楽曲内で多々散見されることもあり、作曲家としての実力がどうなのか?という点について、少し離れたところから、遠目に見ていた方も多いのではと感じてました。

作曲指示書

こういった既存曲の継ぎ接ぎ的な、コラージュやパッチワークの多用については、現代音楽の優れた作曲家でもある新垣隆氏本来の作曲技法と云うよりも、概ね佐村河内守氏のオーダーに拠る部分が大きいみたいです。更に今回の場合、ある程度まで自身のオリジナルで旋律を用意した上で、複雑なアレンジや楽曲構成等をプロの作曲家に任せるといった、良くありがちな類の話では無いみたい。この音楽的主体要素が皆無な電波指示書の内容を一言で受信すると「中二病でも恋がしたい!」デス!

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今回の件では、視聴者を裏切ったという点のみならず、佐村河内守氏のコンサートツアーでの興業に関わる方々、オーケストラやピアニスト、バイオリニストなどの演奏者の皆さん、フィギュアスケートの高橋大輔選手と関係者各位、DENONレーベル@日本コロムビア等々へ、多大な時間的、金銭的な損害を与えたことになるという意味でも、非常に残念な結果になってしまいました。

でも個人的に一番残念だったのは、佐村河内守氏が、楽譜の読み書きも出来ず、ピアノも殆ど弾けず、単に虚構の作曲家を演じていた部分を超えて、明白に被災者を食い物にしていたことです。これは明らかに一線を越えていると思います。そもそも重度の聴覚障害を詐称している点に始まり、元々の着想、及び作曲依頼時には全く原爆について勘案しない「現代典礼」という曲を、後付けの理由でHIROSHIMAとしていること。あまつさえ、震災の被災者を集め、彼らの前で「ピアノのためのレクイエム」を披露する際に「本当に神に誓って、命がけで書きましたので、聴いてください」と彼は言ってます。う~ん・・・これを、あの場で、このように言えてしまう事実の方が、自分は精神的に一番辛かったです。

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追記:音楽の感動と本質の在処

追記:僕は佐村河内氏作と呼ばれる楽曲をテレビで聴いた時、無為に複雑化させたコラージュとオマージュの固まりだと感じてしまい、演奏の本質へ素直に耳を傾ける事が出来ませんでした。それを書いた新垣隆氏自身も、本人の作曲家としての本来あるべき姿とは別の所で作った作品であり、会見を拝見するに、やはりそのように認識されていたのではと思います。ある意味、解った上で書いていた筈です。

ただ、プロの作曲技術を生かしたある種の模倣的、職人芸的な楽曲であったとしても、それを聴いて評価していたリスナーの皆さんについて、浅はかで本当は音楽を解っていないとか、音楽よりも「背景にあるドラマとストーリー」を聴いていたのだろうと揶揄すること・・・それは少々違うと思いますし、決してやってはいけないことではと思います。

大事なことを忘れて欲しくないのですが、音楽は楽曲そのものの持つ力が全てではありません。人々の感動や共感を得るためには、むしろ誰が演奏しているか?というのは本当に重要な要素です。

例えば、大作曲家の作品で、どうみても駄作というものは色々ありますし、クラシックの世界では、当世では高く評価されていても、音楽的完成度や品位から現在では評価が低く、殆ど日の目を見ない作曲家もたくさんいます。逆に名曲であっても、演奏者の能力が低かったり、その日の演奏の調子が悪ければ、それは時につまらなく、聴くに耐えず、凡庸な音楽にしかならないものです。

加えて、仮に新垣隆氏と比べるべくも無いようなレベルの子供やアマチュアが作った稚拙な楽曲であっても、優れたピアニスト、指揮者、オーケストラの手によって、活き活きとした素晴らしい音楽に見事に化けることなどいくらでも可能です。音楽というのは決して曲のみの力では無く、楽曲と奏者の表現力が合わさってはじめて生きた形になるものですから

佐村河内名義@新垣隆作曲の楽曲も、コンサートで演奏され、CDに録音された段階で、多くの優れた演奏家の手によって真摯に取り組み紡ぎ出された音楽を、聴衆の皆さんは聴いているのです。だからこそ、其処に良い演奏と出会いがあれば、素晴らしいと感じる方が沢山いらしても全く不思議では無いし、音楽の素晴らしさと感動を共有することの価値そのものに何ら変わりはありません。

今回の事件によって、今後、一連の楽曲の商業的価値は概ね失われてしまうでしょう。だからといって、リスナーの方々も演奏者の方々も、皆が信じていた当時に紡ぎ出され、共有された演奏と感動の本質そのものが毀損されるわけでは決して無いと最後に付け加えておきたいと思います。

2014/4月某日にテレビを観て追記

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音楽に障害やハンディキャップというバイアスがもたらすもの

今更ですがあらためて結論を書いておきます。

障害に加えて原爆や震災というストーリーが、一連の楽曲へ強いバイアスをもたらし、多くの方々への感傷と共感を誘いつつ商業的価値を与えたというのが、今回の騒動の裏側にある私達の感情的なわだかまりでした。

その結果、聴き手、弾き手、評論する人々も含め、佐村河内守氏に騙された、騙されたと感じた人々が大勢いる。でも、ここで騙された方々は=云ってみれば殆どは善意の人だったからなのですから、騙されたことに胸を張れば良いのです。後味の悪さを感じる必要が何処にあるのでしょう?と少し訝しく感じてまいました。

音楽にそれ以外要素からのバイアスが掛かることについて、純粋な音楽論的な意味での賛否両論はあると思います。私自身、余り好きでは無いが、身体的障害のある演奏家が、実力以上の評価をされてしまう件について内心快く思ってない事もあったり無かったりしますし。。その割に障害があり、尚かつ好きな弾き方をしてくれる演奏家だったりすると、障害前提での過大評価をされていても、えこひいき上等で全く気にしない自分がいたりします。

音楽に限らず、何事にもバイアスのかからない人など居ません。

僕が佐村河内氏の依頼で作った新垣先生の楽曲を放送時に素直に楽しめなかったのも、それは、障害者だの広島だの震災だのと暗澹たる精神性を番組内で煽る割には、曲の中身はオマージュとパッチワークによる知識と技巧のひけらかしじゃん?というクラヲタのスノビズム、間違い探し的な穿った見方をする逆の意味でのバイアスが、間違いなく其処にあったからです。

このNHKが煽ったそもそもの前提が全く無かったとしたら、僕はきっと佐村河内@新垣氏の楽曲について、かなり違う見方をしていたと思います。例えば、色々ごった煮だけど、ここまでちゃんぽんして綿密に編み上げるなんて、この作曲家とんだヲタクだわ、どんだけ守備範囲広いんだ~?相当頭が良くてピアノが巧い人だろうなぁ・・・なんてニヤニヤしたりするワケです。或いは仮に全く違うプロセスがあり、アニメ内でこのレベルの楽曲が使われていたりすれば、天才現る!なんて大騒ぎしていたかも知れません。

そういった視点で受け止めると、今回の件で楽曲にまとわりつく妙なつきものが取れたというか、新垣隆氏自身の見識の深さや、作曲の幅と技巧を楽しめるという部分では、新垣氏にとっても、生み出された一連の楽曲にとっても、憑きものが取れて本当の意味で良かったのではないかと思うのでした。

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新垣センセ、昔、ゲーム音楽の鬼武者を書かれていました(厳密にはアレンジしつつメタモルフォーゼした)が、これからまたアニメゲームの劇中音楽をやればいいのに・・・。クラシック音楽ベースでこんだけめんどくさい曲を書ける人材は、ぶっちゃけ殆ど居ないと思うのですよ。劇場版のオーケストラ曲とかピアノ曲とか、アニメ関係者の皆様は、この人にオファーすると良い。もちろん今度は堂々と本名で(^^) 数々の引き出しをお持ちの先生ですから、きっと斜め上のゾクゾクする曲を書いてくれるはずです…。

アーティスト:スーク・トリオ, 演奏:スーク・トリオ, 作曲:チャイコフスキー
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な~んて、ご自宅では年代物のクラビノーバを未だに使われていて(わっちもだw)、色々とかなり苦しい生活をされているであろうに、非常勤教師を辞められ、それでもチャイコフスキーのピアノ三重奏曲、”偉大な芸術家の思い出”を、見事に、見事に弾かれてしまう新垣隆先生を、辺境の音楽系ブロガーとしては今後も陰ながら応援したいと思うのでした。

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