ジャン=マルク・ルイサダ ピアノリサイタル

ジャン・マルク・ルイサダ スーパーピアノレッスン ショパン
著:ジャン・マルク・ルイサダ
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ルイサダは一昨年NHK教育テレビのスーパーピアノレッスンで講師を務めたのもあって、今ではとっても有名で人気のあるショパン弾き。今更ルイサダ?って感じもありますが、良く知らない人もいると思いますので、とりあえず先日NHKハイビジョンとBS2で放送された来日リサイタルの感想を書いてみます。彼は1985年の第11回ワルシャワ・ショパン国際ピアノコンクール5位。批評家賞受賞。そのショパンコンクールで優勝したスタニスラフ・ブーニンが自分以外に才能があるのがルイサダ、ホントは彼が2位とかなんとか言ってた気がするくらいの才能の持ち主です(…過去の曖昧な記憶)。

ビクターエンタテインメント
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今回のリサイタル録画は昨年11月に昭和女子大学人見記念講堂での収録。

今回の来日時はヤマハのCFⅢSで弾いてるのね~。ふ~ん(謎) スーパーピアノレッスン以来のスポンサーだからか~?なんて事は置いておいて、彼の演奏は、いつものことですが、とってもユニークで奇抜。

ベートーヴェンのピアノソナタ第8番”悲愴”を弾くのかと思ったら、いきなりハイドンのピアノソナタの途中から始まり、(前座のこの演奏は素晴らしく良かった) まるでその続きかのように間髪入れず悲愴の第一楽章。この他でもなんでか拍手がイラナイ楽章間には一切休みを入れない人っぽい。悲愴はなんだか解釈が色々おかしいのですが、まぁ、ベートーヴェンの格式ばった演奏があまり好きではない私からすると「だがそれがいい♪」ってなもんなので、真面目な信者さんたちは卒倒するか発狂するかのどちらかでしょうが、問題はショパン。

もの凄く辛辣に深い愛情を込めて喩えると、
「音楽性」だけが取り柄の、
舶来製バジェットHi-Fiオーディオシステム、
…みたいな?…。

解釈はすごく色々考えられていて、一つ一つのタッチの意味合い、指とペダルの音色の使い分けなど、面白いアイデアがいっぱい。タッチのバリエーションが豊かで、次から次へと変わった弾き方をしてくれてほんと見ていて飽きないのですが、技術的なことを云えばミスタッチが多すぎ。もうこれでもかと言うほど間違いだらけ、指回らないし、和音揃ってないし、フォルテで叩きまくるわ混濁するわ、先生がそんなに間違えてどうする?と小一時間。。。(滝汗) ついでにショパンのピアノソナタ第3番、1楽章の途中で音外して暫く意味不明になったかと思えば、2楽章では不思議なメロディが聞こえて来ちゃう彼の脳内楽譜は、ショパンの弟子あたりが枕元に降臨し、彼に授けたスペシャルデムパ版じゃ?とか何とか敢えて言ってみるてすと♪

アーティスト:Jean-Marc Luisada
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椅子を目一杯下げ、腕を曲げて変な角度でピアノに向かい、汗をだらだら流しながらピアノに向かっているのですが、ショパン的なデリカシーに満ちたニュアンス溢れるフレーズがあったかと思うと、次の瞬間はオーバーで作為的な抑揚表現で鍵盤を叩きまくる。そのエネルギーの49%は音に変換されてないよね?とかなんとか見ていて痛くなるじゃなくて言いたくなる極めて個性的且つ非合理的なパフォーマンスに、聴き手をズッコケさせたいのかハッとさせたいのかイマイチ判らないって思っちゃう自分はやっぱり修行が足りない???

とはいえ…弱音部は本当に奇麗なんです♪

テクニックの面での下手くそさ加減はこのさい置いておいて、素晴らしい音楽的才能と、聴衆にかなり媚びている気がしなくもないオーバーなステージパフォーマンスが見事に昇華融合している今時極めて希有な存在。もちろん良い意味でw これが表面的なパフォーマンスだけならタダのピエロでお調子者なのですが、ルイサダの場合、本物の音楽的センスと中身があるのにもかかわらず、ステージ上でリスナーに媚びておかしな演歌を演じているその姿がシュールというか、憎いというか、お人好しでサービス精神が旺盛すぎて聴衆に振り回されてしまうタイプなのかもですね。。。ほんとお茶目なユダヤ人だ♪ もしかすると、彼の虚飾の無い真の音楽と直感的なひらめきの発露に触れるためには、或いは大きなステージ以外のもっとアットホームでプライベートな別の所なのかも知れない等と考えてみたり。。。若しくは編集でミスタッチを削られたCDで聴く方が、見た目の変なことが気にならなくて音楽にのめり込めるかもとか思いめぐらしてみるのでした。

ショパン生誕200年記念のマズルカ集 個人的に思い入れのある軽井沢大賀ホール収録

アーティスト:ルイサダ(ジャン=マルク)
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それにしてもルイサダのような時に譜面に非忠実的で独創的な解釈や、つたない(好不調の波の激しい)演奏技術のピアニストが、今この時代に存在を許されているのは本当に凄いこと。彼より遥かに下手くそな私からすると、本来ピアノ弾きというのはこうであって良いとうか、こうあるべきだとさへ思うのですが…20世紀後半のクラシック音楽界というのは、印刷された楽譜に書かれている表面的な音の羅列と論理的構築に、技術的に正確であることがまず第一義とされ、本来作曲家が表現した音の行間や詩的、精神的、霊的な表現力が二の次にされてきました。当時の作曲家本人が演奏技術的に未熟であったり、自分の曲を即興的且つ自由に表現した19世紀ロマン主義を、腐敗した悪しき伝統であると忌避断罪しながら、譜面にロジカルに忠実に弾くことが作曲者への奉仕であるなどという、事実をねじ曲げすり替えられた理屈が、一種の教育的指導の中で宗教的なまでにまかり通っているのが近現代に於ける正統的?音楽解釈です。

若い奏者の多くはテクニック至上主義に陥り、クラシック音楽から弾き手の個性が失われ、表現が一様に硬直してしまったそんな風潮の中、定められた型を定義し助長する多くの”技術”コンクールを筆頭に、芸術としての音楽性は二の次に、ピアノ弾きが楽器を使ったスポーツ競技になってしまっている現状、数は少なくとも彼のようなピアニストが生き続けているのは本当に貴重というか、逆に21世紀の現代の聴衆が、彼のような真にクラシックなショパンを、一方的な蔑みと批判に終始せず素直に楽しんで評価している事は、ほんの一昔前を鑑みると実際かなり隔世の感があります。そういった音楽解釈上の問題について、スーパーピアノレッスンの締めくくりにルイサダ自身が語っていた言葉をここに書きたいと思います。

Ariola Japan
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“現在のピアニストに対して私はこう考えます。21世紀のこれからのピアニストに私は安心しています。私の世代である70~80年代はインテリ風な美学にこだわっており、当時の天才的ピアニストの解釈を基準にした硬い雰囲気でした。しかし、現在はピアノ黄金期の弾き方に回帰しつつありほっとしています。ショパンは生徒に一日3時間以上練習してはいけないと言ったそうです。私も同感です。もちろん(テクニックが要求される)今の時代はもう少し練習しないといけません。ショパンの時代よりも慌ただしくストレスを感じやすい世の中です。しかし、ピアニストやバイオリニストの練習は1日4~5時間以内に止めるのがよいと思います。残りの時間で教養を身に付けましょう。昔の若者の方がもっと教養がありました。演劇、文学、映画、あらゆる領域に興味を持つべきです。こうした教養が良い演奏に結びつきます。1920~30年代、当時はピアノとバイオリンの黄金期でした。素晴らしい録音と出会ってください。例えば…ロシアの偉大なピアニスト、ゲンリヒ・ネイガウス(ハインリッヒ・ノイハウス)、ウラジーミル・ソフロニツキー(ソフロニスキー)やグレゴリー・ギンスブルクも良いですね。私が個人的に好きなショパンの弾き手たちです。

カッコ内はNHKのテロップ表記。ゲンリヒ・ネイガウスはスタニスラフ・ブーニンの祖父

こちらも軽井沢 大賀ホール独特のアコーステッィクな響きがSACD音質でリアルに収録されています。

Jean-Marc Luisada
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コメント一覧 (2件)

  • 先日は失礼しました。
    4月14日に杉並公会堂で、SD05と新作スピーカーのお披露目コンサートをやります。ぜひ、ぜひ。
    PS
    ピアノ弾かれるんですよね。ちょっとお願い事がありまして、メールいただけませんでしょうか。

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