株式会社ナナオ
(ブランド名EIZO)といえば、日本が誇る世界最高峰、最高画質の
PC用液晶モニター
メーカーとして全世界にその名が知られていますが、このメーカー、実は数年前から主力の液晶モニタの陰で
FORIS.TV
というデザイン家電系のコンシューマー向け液晶テレビを作っていたりします。
先日パソコン用高級液晶モニターの現物比較にナナオの東京ショールーム
EIZOガレリア銀座
を訪れたのですが、その際におっ!と思わせてくれたのが年末に発売されたばかりの新型
FORIS.TV
。20型/26型/32型の3種類のサイズと5種類のカラーラインナップがあり、インテリア雑誌の誌面や新聞の折り込み広告等で写真をご覧になったことのある方も多いと思うのですが、いかんせん直販及び一部店等のみでしか取り扱いのない製品。私もデザイン重視のテレビだろうと全く期待せずにふと覗き込んでみたところ、意外や意外画質がかなりまとも!更に加えて音質もなかなかGOOD♪

EIZO 26V型ハイビジョン液晶テレビ SC26XD2
PC向けハイエンド液晶モニタ
の分野で、品質面で世界のトップの地位に君臨するナナオですから、液晶テレビも高画質で当然といえばそうなのかもですが、ちょっと驚いたのが、現在主流であるコントラストや発色面での店頭効果や、一般ユーザーの記憶色を狙った過剰な疑似演出とは対極にある、極めて元信号に忠実な素直でプレーンな画質。この保守的な画作り、映像マニアや放送関係、映像技術にお詳しい方がご覧になったら結構唸るんじゃないかしら?見て直ぐに感じたのは、部屋に
プロフィールKX-32HV50やハイエンドプロジェクタ、21インチCRTに
GDM-F500Rを並べる某社wで映像技術開発に携わる友人のチューニング。
FORIS.TVの画作り
はぱっと見は色が冷めていて地味なトーンなのですが、過剰なコントラストや明るさではなく、中間階調の豊かさやディティールの描写精度の高さを追求した質感は、民生用にもかかわらず何処かプロ用モニターを彷彿とさせる説得力があるのです。
観た瞬間に色で印象づける派手なコマーシャルやバラエティー番組ではなく、じっくりとフランス映画を観たときに、気付くとそのテクスチャーにハッとさせられるようなナチュラルな描写。店頭効果を狙わざるをえない大手家電メーカーの市販品では作り得ない、誇張を廃した原信号に忠実な素直な映像。だから普段液晶を叩きまくりで液晶ユーザーからブーイングされちゃう私が、液晶なのに観ていて目が疲れない。それどころかいつのまにか映像に引き込まれている自分がいる。ちなみにパネルは上で書いた画質で評判の他社モデルと同じく国産のIPSパネル+OD(オーバードライブ回路)。20型のみ国産VAパネル+OD。3機種とも画作りの方向性は殆ど同じですが、その中でも特に26型
SC26XD2
との質感の良さには個人的にびっくり♪ そもそもの画作りがナチュラルでプレーン、要するに複雑な映像回路で過剰に創作された誇張感が無いため、おかしなノイズ感や残像感が気にならない画作りなのです。

EIZO 32V型ハイビジョン液晶テレビ SC32XD2
32V型と26V型は国産某IPSパネルですから視野角も抜群。
EIZOガレリア銀座
は一般的な量販店と違って光量を家庭の室内並に絞った静かな環境なのですが、そんな暗めのショールーム内でも黒浮きせずむしろ逆に画質の良さが際立つところは、暗室に弱い既存の液晶テレビのイメージを覆すポイント。これってある意味販売相手をハイクラスユーザーに絞った直販だからこそ出来る技だよなぁと。このシックな大人の画作りは、ファーストインプレッションで勝負が決まってしまう光量過多の量販店で、店頭効果を狙った他社製品と横並びにされたら、この魅力は伝わりにくいだろうし、騒音の中ではサウンドのディティールもさっぱり伝わらないでしょう。
実は今回私が一番驚いたのが音質。この音の良さは画質より先に私の耳に飛び込みました。
FlexScan
の品定めに意識が向いていた私は、画だけならFORIS.TVの前を素通りしてたかも(汗)ですが、その時たまたま32型
SC32XD2
から流れてきた
Daniela Barcellona
の歌声に、思わず何事かと足を止めてFORIS.TVに見入ってしまったわけです♪ このクラスの小型ハイビジョン液晶テレビで、価格競争から来るコスト制約と薄型化から真っ先に犠牲になるのが音質の筈ですが、フォリスに限ってはなにやらクリアで非常に音場感の豊かな音がする。
EIZOガレリア銀座
の個室音響が静かで良好なのもあるのですが、それにしても意外な音質のクオリティ。他社の家電小型液晶薄型テレビは、正直外部スピーカーとアンプを繋げない限り、単体で音楽再生となると正直使い物にならないレベルの音しか出ていなかったりするのですが、FORIS,TVは明らかに何かが違う。こちらもパネルの画作りと音作りのイメージは似ていて、艶やかさや派手さを狙わず、中域や台詞が輪郭良く聴き取りやすい抑えの利いたサウンドではあるのですが、単純に小型テレビからイメージさせる以上に明瞭でストレートなフラットサウンド。誤解を恐れずに言うならば、同クラス
プラズマテレビ
の中で最も音質が良いと評判の、うちの
PDP-427HXよりも奇を衒わない素直な音がします。

銀座ショールームには東芝のハイエンドHD DVDレコーダー
RD-A1が常設。FORIS.TVのハイビジョン画質をじっくり堪能できる。
FORIS.TVの音
は良い意味で箱庭。決して低音を強調したり、ボリューム感のある音ではありません。テレビのサイズを考えればそれは仕方がないのですが、そもそもテレビの音というのは中域の台詞が明瞭でなくてはいけない。話声が聴きやすくなくては始まらないのです。音楽を聴くことは二の次。結果的に上下をばっさり切った「テレビの音」を割り切って作り、チープなアンプとユニットで徹底したコストダウンをはかるのが一般的。更に意外とありがちなのが、低品位な音質を誤魔化すためにデジタルサラウンド等の疑似強調が多用され、テレビなのか疑似サラウンドなのか、ピュアオーディオを狙っているのか良くわからないF特の狂った中途半端なクオリティになってしまう事。その点、
FORIS.TVの音
は描写に無理がない。ユニットの持ち味に帯域を任せていて、変に背伸びをしていない。かといって低質な音とは一線を画す何かがちゃんと聴き取れる。
ちっょと驚いたので営業の方にお伺いしたところ、内蔵ユニットは
オンキヨー
製。キャビネットも合わせてスピーカー部分はトータルで設計を依頼したそうです。各モデルのエンクロージャーサイズに合わせた異なるフルレンジユニットが、薄型テレビでは異例の大容量キャビネットに収められています。エンクロージャーはテレビの裏側だけではなく、下側にあるテレビと同サイズの謎の平面体の中にたっぷりあるのです。このパネル、決して飾りじゃありません(笑) 薄型画面一体型の小さなエンクロージャー部分のみではこの音を稼ぐのは不可能でしょう。内蔵ユニットは32型
SC32XD2
が12cmフルレンジシングルコーン。26V型
SC26XD2
がデザインの異なる10cmフルレンジダブルコーン。両機共に良く似た音質ですが、32V型の
SC32XD2
はスピーカーの間隔が広く、フラットな音に加えて僅かに余裕のある響きや甘さのニュアンス加味した音楽的な音。低域は程々ですが底面バスレフポートとフラットなフロントパネルの反射でクリーンでスッキリとした音場感を演出。対して26型
SC26XD2
はピアノの低域の弱さが僅かに気になるものの、32型より全域に音の解像度が高く、
オペラシティ・コンサートホールの拍手の音色のリアルさとシャープさでは驚くことに上位機種を上回っています。

両機種共に下手にトゥイーターを載せて2way化したりしない事が結果的に好結果に繋がっているみたい。更に搭載されている
DSPはヤマハの技術。上記のレビューはDSP・OFFの状態ですが、サラウンドをONのした場合の効き方も、不自然さが抑えられていて音像の膨張感や位相の過剰な反転感が無く好印象。内蔵アンプはデジタルアンプですが、消費電力を抑えながら、限られたコストでまともな音を目指す場合、デジタルアンプを選択したのはとても合理的。もちろん私が推薦するピュアオーディオアンプや小型スピーカーの組み合わせと比べた場合、FORIS.TVの内蔵スピーカーはあくまでテレビの音であるには違いないのですが、より高音質を求められる場合でも、
オプティカルディジタル
及び
RCAアナログ接続
によるピュアオーディオ機器への外部出力が可能ですし、オーディオ趣味が無くテレビで全て完結してしまうであろうユーザーさんが、これ一つでもそこそこ音質を楽しめるという意味ではかなりポイントが高い。新型FORIS.TVのXD2モデルは
DVD/CDプレーヤーを内蔵
していますので、上半分を映像モニターとして使う他に、BGMモードで下半分をモニタと独立したCDアンプスピーカーとしても使用することが可能です。ラジオやレコードを聴きたい場合には外部入力端子(
ステレオミニプラグ
)がちゃんとあったりします。当然
iPodなど各種ポータブル音楽プレーヤーを接続することも出来ます。ナンセンスな比較かも知れませんが、BGMラジカセとして見た場合、NASAが採用している某メーカーの高級ラジカセより、個人的には食指が伸びるサウンドクオリティだったり♪


そしてデザイン。まぁこれは
メーカーの写真
を見ていただければ大体イメージしていただけると思いますが、一般的な液晶テレビとは大きく異なる個性的なモダンデザイン。美しいデザインに
カッシーナ等の高級モダン家具店に置かれるのもさもありなん、紛れもなく
インテリアとして語れるテレビ
です。背面も奇麗にデザインされていて、配線もスタンド内部に隠れるよう、ケーブルマネジメントまで考慮されています。外装色はなかなか大人な色調で、写真で見るよりももっと深くシックな印象。例えば一番売れているらしい藍色は、ナナオの地元である
成巽閣の加賀群青をモチーフにして選ばれた色で、他の色も総じて伝統的な"和"の美しさを彷彿とさせるちっょと他ではお目にかかれない微妙な色遣い。個人的にはもっとイタリアンでビビッドな色合いや、アナログ液晶テレビの
ハローキティSC19XA1
みたいなホワイト基調パステルカラーのラインナップが上位機種にあっても良いような気もするのですが、そこはやはり本体の色が映像の邪魔をせず、さらに国産メーカーとしてのプライドと美学を表現するためには、こういった大人な色の方が中の品質の誠実さと合わさってよりコンセプトに忠実なのだろうと思います。


SC19XA1 Indication WHITE
使い勝手も全体的に良好。左右に180度スィーベル(首振り)も可能で、しかも
SC32XD2
はリモコン電動。小型の
SC26XD2
と
SC26XD1
は高さを4段階、
SC20XD2
は3段階に変更できますので、コタツで丁度良い高さ、ソファーの目線、椅子の目線など、それぞれのライフスタイルに合わせ、適切な高さを選択することが可能。スタンド一体型ですから、デザインの合わないテレビ台等が必要になることも無く、逆に何処でも省スペースを実現することが可能です。敢えて重箱の隅を突いて難点を挙げるとすると、リモコンは指向性が広く操作性も悪くないのですが、デザインが普通過ぎて、リモコン自体の色や質感が美しいテレビと合っていないのです。もっと重量と高級感のあるモダンデザインのリモコンが付属してれば・・・と感じるのは私だけではない筈。但しテレビ背面にリモコンを収納することが出来ますので、お客様に見せたくないときは背面へ挿しておけば隠せます♪
最後に、ショールームで32V型「
SC32XD2
」、26V型「
SC26XD2
」、20V型「、
SC20XD2
」と、3台並べて色々比較した結果、基本的な性格は共通していて甲乙付けがたいのですが、画質、音質共に個人的に一番気に入ったのが真ん中のDVD/CDプレーヤー内蔵モデル
SC26XD2
」。箱庭オーディオシステムとの併用や、書斎やヘッドサイドでのパーソナル使用にはこれがベストのサイズです。更に32XD2と異なり、26型は動画ボケ対策に黒挿入技術が使われていない点が、近接視聴を考慮した場合に私の目には好ましく感じられました。逆に32型はより広がりのある音質も含めてキッチンやリビング向き。それからお洒落な店頭やオフィスでのデモ等にかなり、というか激しくオススメ♪ どの機種も和室であれ洋室であれ、整然と美を意識したお洒落なインテリア空間にマッチしますので、薄型テレビに画質と音質のクオリティを求めながらも、上質なライフスタイルを犠牲にしない、違いのわかるハイクラスユーザーの皆様にこそ導入して欲しいと感じました。
■
FORIS.TV購入者の声&麻倉玲士氏先生のレポート♪
ピュアオーディオRANKING←今日も入場料を払う♪
値落ちを待ってないで早めに買うことを勧めます。
といいますのは、NANAOの販売量では
パネル製造元に、同程度の仕様のパネルを継続供給してもらう事が厳しく、後継機が無くなったり迷走する事があったためです。
具体的には、SC23XA1や、OCBパネルを積むも、ほとんど数が出ず幻となったVT23XD1が該当します。
FORIS.TVはLINNのCLASSICにも似て、敢えてオーナーの方を選ぶという意味で実に挑戦的です。
なにしろ、HDMIなどの接続端子こそあれ、既存の四角い箱型の録画機器を置く場所をTV内蔵スピーカと台にて占拠し、事実上視界から押しやる設計方針ですから。
この商品企画の鋭利さを反映していたのが、川崎氏による、事実上の松下名指しプレゼンです(その後の経緯を含む記事)。
http://design.weblogs.jp/special/2005/12/foristv_ec41.html