NHKによるパイオニア、プラズマパネル生産からの撤退報道。。。私には正に寝耳に水のニュースでしたが、この件については朝日新聞が一週間以上前に記事を飛ばしていて、一部では既に話題になっていたみたいですね。以下、CD92さんからの紹介です。
(CNET JAPAN 2/25日の記事)
パイオニア、プラズマ事業見直し…と思いきや、なんでもかんでもやるって?
(3/5日の記事)
パイオニア、なんとプラズマパネル生産から完全撤退?
(補足)
“KURO”は期待以上のすごさだった
事業再編の可能性について冷静な考察がされています。私のパニック記事よりずっとためになりますので、この件について注目されている方は是非上記リンク先をご覧下さいませ。
本件についてのパイオニアの正式発表は3/7日になります。これがあるまで具体的な決定事項は判らず、記事の内容はあくまでメディア報道を根拠にした推論であることをお断りしておきます。
まず、昨年パイオニアはシャープとの業務提携を発表し、液晶テレビへの参戦を表明していました。これについて私は、従来プラズマテレビのみで商品展開を行っていたPIONEERには存在しなかった37型以下のサイズのテレビを、シャープのOEMパネル使い開発生産すると理解していました。
前提として、パイオニアには37V型以下のプラズマテレビを生産する設備がありません。また、37V型のプラズマテレビを最小モデルとする松下(VIERA)ビエラや日立Woooも、37型未満のプラズマパネルを生産することは量産技術的に現状不可能であり、中型以下のモデルには全て液晶パネルを使っています。
日立37V型地上・BS・110度CSデジタルハイビジョンプラズマテレビWooo P37-HR01/P37H01
パイオニアの認知度の低さ、売り上げ台数ベースでの市場シェア、店頭での売り場確保率の低さは、42V型以上の高額な中~大型ディスプレイしか作っていない事が大きな理由です。薄型大画面テレビが一般家庭に浸透しつつあると云っても、住環境が手狭な日本国内の場合、実はその多くは37型以下のサイズの出荷台数がメインであり、意外と42インチ以上の大型テレビは売れていません。
PANASONIC 37V型地上・BS・110度CSデジタルハイビジョンプラズマテレビ VIERA TH-37PX80
調査時期によってバラツキはありますが、国内の液晶テレビに占める40型以上の中~大型サイズは、液晶テレビ全体の3分の1。2年前の2006年初頭には、液晶全体の1割にも満たなかった事を考えれば急速に大画面化が進んではいますが、それでも未だに小型サイズが優勢であることは否めません。プラズマテレビにしても、出荷台数の約半数が最小サイズの37型であり、ここを持たないパイオニアがシェアを伸ばせるはずが無く、店頭に颯爽と並ぶ42型以上の中大型テレビは、未だに庶民にとっては高嶺の花、そもそも手狭なリビングに置けるサイズを超えているというのが現実です。パイオニアは大画面で売り場面積を取る割に台数が出ませんから、ヤマダ電機や上新電機等の大型家電量販店でさえ、取り扱いが隅っこか、そもそも店舗によっては置いていないのが現実です。
シャープとの業務提携について私は、この状況を改善するために、パイオニアがそもそも製造できない37型以下の小型ラインナップを、シャープから液晶パネルを調達する事で揃え、ビジネス規模を拡大しようと考えていると好意的に受け止めていました。ですので、今回のプラズマパネル全面?撤退的な報道は寝耳に水だった訳です。
更に、上記リンクに含まれるプラズマ事業見直しの内容には、パイオニアの自社開発プラズマディスプレイ生産を50型と60型に特化し、42型を切り捨てて、シャープの液晶パネルを使ったモデル、或いは松下か日立のプラズマパネルを採用したモデルに切り替えるのではとの推測が示されています。
PIONEER KURO/PUREVISION 42V型
これで私がまず思ったのは、PIONEERにとって、プラズマ他社のみでなく、フルHD液晶陣営も相手にしている42v型の行方。パイオニアにとって最も激戦区である42型の自社開発によるフルHDパネルの量産化が、既に実現した松下に後れを取っている上に、開発製造コスト面で採算目処が立たなため、今後の量産実用化を諦めて、松下電器から42型フルHDプラズマパネルを購入する、ついでに今まで製造できなかった(プラズマテレビ市場の出荷台数の半分を占める)最小モデルの37型についても製造委託或いはパネルを購入するという考え方です。
PIONEER KURO/PUREVISION 50V型
しかし、これは全体のサイズ別出荷台数からの推測ですが、PIONEERにとってはプラズマテレビの中で42型の占める割合が、実は全体の売り上げ台数の半分以上、というか大半を占めているのではないでしょうか? KUROとピュアビジョンの50型以上の平均店頭価格は50万円を超えますし、30万円台前半で手が届くのは42型だけです。結果、50型以上に特化した高品位パネルの自社開発製品のみとなると、自社開発パネル搭載機の市場シェアは、1割弱どころか1%もおぼつかなくなる恐れさえあります。主力42型の切り捨てからは、もはや本当に量販店等から駆逐され、高級機種として高額所得者やマニア向けに一部の基幹大型店やホームシアター専門店にのみ暫く並ぶものの、程なくして台数を裁けず赤字が雪だるま式になり、プラズマ事業全面崩壊…というビジョンしか見えないのですが。。。
こんな風に考えると、プラズマ事業を50V型以上に特化し、42V型を切り捨てるのは、シェアや収益の面で既にナンセンスであることが解ります。となると、妥協案としては、フルHD50V型と60V型は自社パネル。42V型(フルHD)と37型は松下に生産委託。37型以下或いは未満はシャープの液晶パネルで自社開発。これが製品ラインナップと市場シェアを拡大しつつ短期で生き残る方法になりますが、これでは自社パネル比率が社内出荷台数の数%まで落ち込みそうで、果たして存続できるのかなぁ。。。と思ってしまいます。
そうなる前に、シェアは追わないなどと宣った経営陣が、心臓部である開発生産事業自体を切り捨てるというのが最悪のシナリオです。パイオニアはカロッツェリアブランドのカーナビや
カーオーディオ事業で圧倒的なブランドイメージと収益を確保できていますが、車関係はマーケティングにそもそも莫大な手間とお金を掛けてますし、それで儲かっているってのは、上手いことやって販売価格に対して開発製造コストが抑えられている事ですよね。それに対して、実直に技術を追い求めたプラズマは儲からない。そりゃあ開発費や原価率が高すぎる良い製品を作ってますから。そんなことはプラズマを始めたずっと昔から解りきっていたことの筈です。日本の物作りってそういうものでしょう。カロッツェリアで儲かれば、本家本元のオーディオビジュアルは縮小という短期的な株主利益と収益優先且つ、地道な物作りへの愛着と義務感が足りない人が主導権を握っているのでしょうか。プラズマテレビの売り上げが伸びないのは、作り手の技術力でもテレビの品質の問題でもない。ただシンプルに営業努力、売り方に問題があるからです。その責任を取るべきは作り手でもユーザーでもなく経営陣その人でしょう。まぁどっちにしても7日になれば判ることですけど。
・パイオニア、プラズマパネル生産全面撤退 松下に委託
・パイオニア、プラズマ抜本見直し 42型以下生産撤退
NECに買い戻して貰いたいってどんな寝言だよ~!今のNECディスプレイソリューションズにそんな資金があるワケなかろうに!(´Д`;)
コメント一覧 (2件)
紹介頂いたblog記事で既に引用されていますが、全体の構図としては、北米市場における低廉化・二極化に飲み込まれ、パイオニアの経営規模では抗いがたくなったように見えます。
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080131/pioneer.htm
>第3四半期のプラズマテレビ地域別販売状況は、
>北米が40%、欧州が45%、日本が5%
そもそもPDP総出荷台数ベースの約半分は、国内ではPDPで商売していないLGとSamsungが占めています。複数の会社の調査結果でも、全体のシェアの構図は同じです。
http://www.displaysearch-japan.com/release/2008/01/r31-1.html
いわゆる「フルHD」比率は、総出荷台数の10%台に過ぎないとされ、30インチ台の廉価版PDP増加といい、国内と全体像は根本的に様相が異なります。
総じて、本田氏が懸念した通りになりつつあるといえるでしょう。
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0710/05/news024.html
ヨーロッパと北米向けには、日本向けと同グレードのハイエンドモデル以外に、超コストダウンしまくりの低品位プラズマで数と利益率の勝負を仕掛けても良かったように思います。もう今更何言っても手遅れですけど。。。