それにしても、いつも日本のオーディオ市場を見ていて思うのが、極端な内外価格差の存在と、ハイエンド偏重による取り扱いブランドの少なさです。諸外国、イギリス、アメリカ、台湾、香港、韓国などで当たり前のように並んでいる欧米の庶民派有名ブランドの多くが、何故か日本では販売されていません。廉価なオーディオ機器が数多く並んでいる海外のオーディオショップを覗く度に本当に羨ましくなります。

B&W90年代前後のバブル期には、円高の影響もあって、多くの海外製品が庶民にも手の届く範囲の価格で日本に輸入されていました。丁度私がピュアオーディオに興味を持ったのもそういった時代で、プリメインアンプのCREEK4240(66000円)Musical Fidelity A1 junior(90000円)ARCAM alpha5plus CDプレーヤー(85000円)と、カッコ内は当時の購入価格ですが、今では信じられないような低価格で素晴らしい輸入オーディオ機器を色々と手に入れる事の出来る時代でした。

その後、国内メーカーでさえピュアオーディオ事業を停止するほどの長引く不況の影響もあって、普及価格帯を中心にその多くが代理店と共に日本市場から撤退。追い打ちを掛けるユーロ高と円安。ハイエンド機器については現地価格を知っている私からすると驚くような法外な値上げを繰り返していたり、その結果として、日本国内でのオーディオ機器のマーケット自体が、高価格、高付加価値製品に偏重してしまっている印象です。結果的にピュアオーディオを楽しめる層が高所得者に限局され、若年層から趣味としての裾野が広がりにくなってしまい、更に限られた一部の人の趣味という色彩が強まり、閉鎖的且つ非常に偏った状況に陥っているように感じます。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、バブル時代末期にに日本で販売されていたバジェットHi-Fi(低価格オーディオ)を代表するブランド製品の多くは、今でも現地にちゃんとありますし、上記で挙げたような日本以外の諸外国では今でも普通に販売されています。私が好きなイギリス製品の一例を挙げると、NADCyrus(サイラス)audiolab(オーディオラブ 注:旧 TAG McLaren)、Cambridge Audio(ケンブリッジオーディオ)、Mordaunt Short(モダンショート) 、Wharfedale(ワーフェデール)Mission(ミッション)、EPOS(エポス)、ROKSAN(ロクサン)などの製品が、日本以外ではどこでも普通に見かけるどころが、米英の本国価格、アジア圏での販売価格共に、仰け反るような低価格で売られていることもしばしば。

Musical Fidelity_a1fbp加えてNAIM(ネイム)、Rega(レガ)、Musical Fidelity(ミュージカルフィデリティ)、MYRYAD(ミリヤド)、Audio Refinement(オーディオリファインメント注:YBAのセカンドブランド)、NHTなど、国内代理店は存在していますが、取り扱いラインナップや販売網が小規模、或いはハイエンド高額製品と違って利益率が低いからか、代理店サイトには載っているけど、ついぞ店頭でお目に掛からないブランドも多い。もう良く考えたらイギリス製品でまともに売られているのはCREEK(クリーク)QUAD(クォード)くらいしか無いじゃんという事になってたり。。。

今年に入ってからも、英国最大のオーディオメーカーであるARCAM(アーカム)と米国のスピーカーメーカーINFINITYの代理店を務めていたDENONが両ブランドの取り扱いを中止にするなど、オーディオ市場の回復どころか縮小と疲弊が更にじわじわ進んでいるように感じます。ARCAMの輸入は何処かが引き継いでくれると良いのですが・・・どうなる事やら。DENONは大企業の良心からか現地価格と変わらない(時には下回る)良心的な価格でアーカムやデンマークのDALIを販売していましたが、零細代理店が引き継いだ場合現状の価格を維持するのは非常に厳しくなるでしょうし、そうなるとバーサタイルな性格で個性が薄いARCAM製品は更に競争力が下がるでしょうから、DENONには利益率にこだわらず、自社製品への反省wと文化を支えるつもりで撤退して欲しくなかったのですが。。。

QUAD99私が海外と比較して日本のオーディオ市場で一番問題だと思うのが、上記のような一般庶民に手の届く価格帯の海外製品がごっそり抜けて落ちていることです。仮に取り扱いがあったとしても、本国若しくは諸外国で、日本円に換算すると10万円を切る普及価格帯の製品が、日本国内では一部の良心的な代理店を除くと、中級価格帯、実売10数万〜30万円程度まで跳ね上がります。音質や音傾向の好みは別にして、これでは工業製品として優秀な日本製のオーディオ機器と比べて、コストパフォーマンスに劣るのは明白です。

勿論、輸入に関係する事業諸経費や税金、PSE法、電源の特注仕様、無料が当たり前の補償とサービス、在庫リスク、迅速な商品手配や些末なことで交換要求するユーザーなど、日本独特の難しさから跳ね返るコストが諸外国と比べて大きいのは否定できません。その上で更にありえないほど数が出ないから必然的に単価に上乗せされる諸経費が大きくなってしまう。

それでも海外製品を買ってくれるのは、このブログを覗きに来るような、オーディオマニアの中でもちょっと変わり者の少数派の人々でしょうか。舶来礼賛主義者(俺w)とか、デザイン至上主義者とか、工業製品としての品質=必ずしも高音質じゃない事に気付いた人々です。とはいっても、低価格な輸入オーディオ製品は宣伝費用も少なく認知度が低く、当然販売数も取扱店もごく僅か。オーディオマニアでさえ多くは雑誌やネット以外で実物を見たこと無いよね?という状況。これではリスクを負った代理店もビジネス的に苦しくなる。取り扱いを継続するためには在庫を抑えて更に値上げをするか、富裕層相手に1点当たりの利益率の高いハイエンド製品を取り扱う方向でしかビジネスが成立しないような状況なのかも知れません。
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日本のマーケットが他国と大いに違うのは、世界で最も優秀な工業製品を量産できる企業規模と技術力があること。自国の製品が工業製品として非常に優秀で価格競争力に優れているので、低価格機器を購入する入門層の大多数は国産ブランドから本格的なオーディオを経験する事になる。かくいう管理人も、最初はステレオサウンドのベストバイ評価を盲信してソニーやオンキヨー製品を揃えた口です(^^; ただ、冒頭で書いたとおり、当時は雑誌の評価を鵜呑みにして揃えた国産オーディオ機器に疑問を持った入門層を受け止めるに相応しい、同価格帯の海外製品が沢山ありましたが、現在はそういう海外製品がごっそり抜けてしまっています。

vividaudio&goldmund加えて、日本は諸外国に比べてマーケットの消費者が大変裕福であることが挙げられます。長引く不況で一時期に比べればオーディオ機器を購入できる層は減ったといえど、日本の場合バブル時代からハイエンドを購入する富裕層は相変わらず一定数存在します。更に団塊の世代から上は退職金や年金長者がハイエンド製品を欲しがるので、期間限定ですがむしろ超高級品の需要は増えている。

長引く不況の煽りを食ってオーディオ離れを起こしたのは、インフレの恩恵を受けらず家計の厳しい働き盛りのミドルクラス世代の人々と若年層。これらの人々はオーディオ機器に限らず、親世代のように車その他贅沢品に大枚をはたくほどの余裕がない。結果、金持ちと老人はハイエンド機器に群がり、若年層や非富裕階級の中年層は、家計と住環境の制約の中で贅沢品のピュアオーディオを諦めるか、安かろうなんたらの激しく低コストなホームシアター、マルチチャンネルサラウンドに行くか、安くて手を加える余地のあるPCオーディオ、劣悪な住環境でも省スペースで純粋な音質を切り取れるヘッドホンや携帯音楽プレーヤー等へ流れていく。こんな状況では一昔前にベストバイだの売れ線と呼ばれていた普及〜中級クラスの製品が売れませんから、国産オーディオも輸入品も、もはやその価格帯には気安く参入し辛い。

その結果、オーディオ機器の販売数や新譜レコードの年間販売量から見てもアメリカに次いで2番目にオーディオ人口や音楽愛好家が多いはずの日本で、一部ハイエンド機器を除くオーディオのコンシューマー市場が中抜けを起こして冷え切ってしまっているのでは無いかと思うのです。

Hi-Fi_CHOICEヨーロッパやアメリカ市場を見てみると、音楽愛好家、オーディオマニアと呼ばれる人々の所得平均が日本に比べて高いとは云いがたい。毎年各オーディオ雑誌で賞を取る彼らにとっての優秀な日本製品の殆どは、日本では各メーカーのラインナップの最下位、エントリークラスに位置づけられる機器が中心ですし、一部ハイエンドブランドを除外すると、イギリスやアメリカのホームオーディオメーカーが作る製品の多くは、日本製の低価格機器と品質的、価格的に比較されるような安価な製品が中心です。WHAT_Hi-Fi_UK海外ではそういう安い値段にしないと結局誰も買うことが出来ないわけですから、大多数のオーディオエンスージストにとって興味があれば手の届く価格帯の中で試行錯誤しつつ、各メーカーがそれぞれの特色を持った数多くのオーディオ機器をリリースする事になる訳です。

オーディオアクセサリーも然り。

オーディオケーブルオカルトだとかプラシーボだとかそんなことを論ずる以前に、日本では、まともな音のするピンケーブルを買うのに安物でも諭吉さん1枚。色々試そうと思ったら数万円クラスのケーブルをとっかえひっかえしないと経験値が身に付かない。そんなべらぼうな輸入品価格に合わせて、国産品まで商魂たくましいプライスタグをつけるから、安くても楽しめるクオリティやキャラクターを備えたアクセサリーがなかなか見当たらない。雑誌も高額品ばかりを礼賛評価。欧米のオーディオ誌のように、低価格で出来の良い物に推薦を与えつつ、価格が上がるにつれて評価が辛口になる、そういう消費者視点が欠けている。
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アメリカやイギリスだったら、日本円で1000〜5000円相当も出せば、日本で1〜3万円で売られている海外製ブランドケーブルと全く同じ物が手に入ります。こうなると下手に自作するより安い。しかも種類がメチャクチャ多くてよりどりみどりですから、その気になればお小遣い程度で色々な音の傾向を楽しみつつ取っ替え引っ替え出来るのです。安いので失敗しても痛手は少ない。少ない授業料でオーディオケーブルとオーディオ機器の相性、自分の好みやこだわりレベルを考察する事が可能です。
Van Den Hul(バンデンハル)RCAケーブル1.0m VH-NAME-10W WHAT Hi-Fi AWORDS 2004受賞

そう、世界には低価格なオーディオ機器や箱庭サイズのスピーカーやトールボーイスピーカー、低価格なオーディオアクセサリーの数々、そんなバジェットHi-Fiが溢れています。近年では中国がピュアオーディオに目覚めつつあり、玉石混合ではありますが、安く魅力的な製品が色々生まれている。それなのに、そういった製品の多くが日本に入ってこないし、入ってきても取り扱いが限られていたり、訳の解らん価格に吊り上がっていて、もはやバジェットHi-Fiと呼べる代物では無くなってしまう。

正直、PMA-1500AEやPMA-390の方が良い音だと思ってる日本のコンシューマー市場は以前とは違います。売れる物はゴールドムンドのように高所得者層へ特化したハイエンド機器。一部の人のための特別なオモチャ。その反面、バブル時代に大きく重い中級価格帯を好んで手にしていた購買層は、既に以前のような購買力を失っている。収入が少ない若年層は更に購買力が低い。加えて一般庶民がポケットマネーで楽しめる普及価格帯のオーディオ機器は、無難な国産製品の独壇場で選択肢が限られ、趣味性の高い舶来品は限られた機種しか入ってこない。こんな状況で今後、バブル時代のようなデカくて重いミドルクラス、ミドルプライスのピュアオーディオが復権出来るような好景気が再び訪れる可能性は極めて低い。音楽にとって本来必要なのは何か?合理的に考えましょう。本当はうさぎ小屋に戦車は不要なのです。

余剰購買力の低い若年層は既にPCオーディオや携帯音楽プレーヤーに趣味の矛先がシフトしています。或いは住環境面からヘッドホンオーディオが第一選択となっている事も多い。現状は圧縮音源が主流ですし、比較想定基準がまだまだ低い分、単品ピュアオーディオシステムと比較して音質的には未だ未だ見劣りしていますが、多人数が参加できて自分で試行錯誤し、手を加える余地があるのはこちらの分野。デジタルデータの容量増加とデジタルアンプの高性能化によって、近い将来旧来のピュアオーディオ機器に肩を並べ凌駕するときが必ず来る筈です。日本のオーディオ業界も、海外と同じようにバジェットHi-Fiクラス、時にPCオーディオやiPod等とも連携しつつ、オーディオのライフスタイルに新たな趣味性や楽しみを感じさせる市場環境を開拓しなければ、もはやピュアオーディオの復権はありえないと考えます。
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高額なハイエンド機器に偏向し、魅力的な低価格製品や手ごろな価格のアクセサリーが不足した現在の日本市場では、既に多くの音楽ファンや若者が、ピュアオーディオに夢や希望を見いだせなくなっている。本来なら少しでも良い音を求めてオーディオ機器にコダワリを持つはずの顧客層を、ピュアオーディオだからこそ得られる高音質、良質な音楽へ呼び戻すためには、ハイエンドオーディオにはない、誰もが楽しめる敷居の低さと、音楽への真摯な姿勢を感じられる手ごろな価格のオーディオ製品、低価格な音質向上アクセサリの多様化、それらを数多く取り扱う販売店や代理店の人々の、国際価格に準じた誠実な価格設定こそが、疲弊し過疎化した日本のオーディオ市場が再び息を吹き返すために必要な姿勢なのではないかと思うのでした。

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