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ムソルグスキー展覧会の絵。リーリャ・ジルベルシュテインとヴラディーミル・フェルツマンの演奏で

キエフの大門2009年冬の新作アニメ「RIDEBACK」”ライドバック”でテーマ曲として使われているのがムソルグスキー作曲の展覧会の絵。第一話でヒロインのバレリーナ尾形琳が踊るシーンでずっと流れていた曲が、展覧会の絵 第10曲(終曲)キエフの大門です。同曲はラヴェルの手による管弦楽や、ムソルグスキーの自身によるピアノなど色々なバージョンがありますが、ライドバックでこの曲が良いな♪と思ってくれた人のために、クラシックの優れたピアニストによる展覧会の絵「ピアノ独奏版」の演奏CDを紹介します。古い演奏による巨匠とか名盤とかのつまんない縛りに囚われない、高音質も加味したいつものスタイルで…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡

2024年追記:キエフの大門→キーウの大門に思うところ・・・

ロシア・ウクライナ戦争のお陰で日本語でのウクライナ表記が色々変わってしまいました。キエフの大門も、今時は「キーウの大門」と書くのが望ましいのでしょうか?ただ、この「キーウ」という謎の発音表記の由来はどうやら英語で、実のところウクライナ語でもロシア語でも無いのですよね。カタカナ変換のウクライナ語でより正確に書くとすれば「クイユ」「クイウ」、ロシア語で「キーフ」「キーェフ」みたいな感じです。なんでこんなことになったのかと不思議だったのですが、新規に日本でウクライナ語表記になった謎のカタカナ語は殆どが英語発音のものっぽい。古くよりユダヤ系の音楽家を大勢輩出している「オデッサ」も「オデーサ」表記になりましたけれど、元々のオデッサこそがそもそもウクライナ語の発音に近く、ロシア語でも「オディェッサ」です。戦争になると事実を歪曲したプロパガンダを通し、人々の理解が色々と狂ってしまいますが、こんなところにも歪みが出てしまうんですね・・・(涙)。

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ムソルグスキー展覧会の絵の名演奏を聴く

演奏はリーリャ・ジルベルシュテイン(Lilya Zilberstein)。1987年ブゾーニ国際ピアノコンクールで優勝した、サンクトペテルブルク出身でユダヤ系ロシア人の女流ピアニストです。ドイツグラモフォンによる1993年ハンブルクでの録音(UCCG-8053)。録音も圧縮リマスター技術が入る前のドイツグラモフォン最盛期のもので高音質。まぁこれでも生演奏と比べてしまうと、この音色が奇麗過ぎて軽すぎるんですけども。。。

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リーリャ・ジルベルシュテインこの録音当時、僕はジルベルシュテインが弾く同曲をホール最前列の本人の正面で聴いたのですが、柔らかく太い打鍵、曲構築の壮大さ、その迫力とダイナミズムにびっくりしたのを覚えています。大胆不敵でおおらか、ロシアの大地のようなロシア女流ピアニストの見本のような演奏。リズム感溢れる生き生きした演奏はそれでいて決してディティールを犠牲にしている訳ではなく、大雑把と切り捨てられる程薄っぺらい演奏ではありませんでした。

昨年春久しぶりに来日し、NHKクラシック倶楽部でのスタジオ収録放送があり、ジルベルシュテインが最初にDGでレコーディングしたラフマニノフの前奏曲集を披露していました。スタジオのスタインウェイには少し苦戦しているようでしたが、音楽面でこの人は全く劣化していないどころか今でも進化しているようで一安心♪ ドイツグラモフォンでの録音契約が切れた後、長らく新規録音でジルベルシュテインの演奏を聴くことが出来ませんでしたが、ここ数年はマイナーレーベルの輸入盤で素晴らしい演奏を披露しているものもあり、機会があれば紹介したいと思っています。

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カップリング曲のセルゲイ・タニェエフ 前奏曲とフーガ嬰ト短調 Op.29と、ニコライ・メトネル「忘れられた調べ」も秀逸。ジルベルシュテインのメトネルを眼前で聴いた事もあって、日本国内では良く知られているロシア人ピアニスト、イリーナ・メジューエワの演奏では少々物足りなくなってしまいました…( ³△³ ).。o

もう一つ。1971年ロン=ティボー国際コンクール覇者で、同じくモスクワ出身のユダヤ系ロシア人であるヴラディーミル・フェルツマンの演奏。2007年の来日時に演奏し好評を博した展覧会の絵、私は同曲の演奏を以前、運転中にカーステレオのFMラジオで一度車で聞きかじっただけなのですが、この解釈にはびっくり仰天しました。なんと云いますか、ジルベルシュテインの王道を行くクラシカルな正統的アプローチとは異なり、あちこち新鮮で前衛的な解釈を取り入れた演奏です。そしてなんだか小馬鹿にされているようでやたら楽しい\(^o^;)/。

ビドロ「牛車…虐げられた人々の暗喩」に集約される暗さや重さなどムソルグスキーによって込められたメッセージ、自分の中の「展覧会の絵」のイメージがひっくり返るような爽快さでした。ただ、これあくまで1年以上前に車の中で聴いただけw すっかり忘れて(…今突然思い出した)CD未だ持っていないんですよね。。。ココへ書いたからには購入せねば(滝汗)

アニメ「RIDEBACK」 ライドバック のOP曲

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RIDEBACKでの展覧会の絵はあくまでアニメの中のバレエとクラシック音楽といった感じでしたが、それとは別にオープニングテーマ曲は格好いいノリノリの曲で気に入りました。何か聞き覚えのある楽音だな~と思ったら、「MELL」ってBLACK LAGOONのOP曲「Red fraction」と同じ人なのね、、、たしかにアレも沸き上がる黒さが良かったw というか、ここまでくるともうアニソンの枠を超えてると思うのですが、中身がI’veって知って正直ぽか~ん(@△@;)

RIDEBACKとRed fractionの両曲を含むMELLのアルバムMIRAGE。

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2009/2/2
ヴラディーミル・フェルツマン ムソルグスキー「展覧会の絵」とチャイコフスキー「子供のためのアルバム」

追記です。先日紹介したロシアのピアニスト、ウラディーミル・フェルツマンのムソルグスキー展覧会の絵が届きました♪ 早速再生してみたところ、まずは冒頭のプロムナードのテンポの速さにびっくり!しかし、ただ速いだけでなく大変音楽的な歌い方でもあり、ぐぐっと引き込まれるキャッチーな演奏です。その後も音楽的な歌い回しと飽きさせないリズミカルな演奏が続き、締めのキエフの大門では敢えてフォルテではなくメゾピアノで入り、レガートで演奏され徐々に音量を上げてドラマティックに盛り上がっていく演出。生で聴いたらコレは楽しそうですね♪ リーリャ・ジルベルシュテイン盤の古典的、ロシア正統的な演奏に対し、こちらは男性的なスケールとたっぷりの歌心を織り交ぜた、アバンギャルドな展覧会の絵に仕上がっています。

内容 (「CDジャーナル・レビュー」より引用)


CBSから移籍した先のミュージック・マスターズがクラシックから撤退すると同時に、日本の音楽ファンの前から姿を消したフェルツマン。3年前ようやくメキシコurtextで復活したが、肝心の音盤はやたら手に入りにくかった。だからこうして国内盤として広く流通するのは喜ばしいことだ。鋭敏な詩的感性をさらに一段磨き込んだこの神秘思想家の現在は、まずオマケじみたチャイコの、しかし比類なき演奏でお確かめいただきたい。変幻自在の音色魔術、意味深長なピアニシモと軽やかに飛ぶスタッカート、霊感に満ちた馥郁たるカンタービレが生み出す生彩に富む表現に心奪われること請け合いだ。「展覧会」では、ソ連最後のヴィルトゥオーゾと謳われた鉄壁の技巧が冴え渡るが、わけてもこの曲に頻出する無数の和音を混濁させずに鳴らし切るトーン・コントロールは傑出している。過剰な意味の負荷を避け、クリアな音響を愚直なまでに追求したこの演奏は、凄味ある豪快さはもちろん、繊細過敏な美しさでも一頭地を抜く出来映えだ。 (川田朔也) — 2005年01月号

録音はクリアでオーディオマニアが喜びそうな?現代的でハイスピードなサウンド。アナログ的でウォームで厚みと丸みのある中~低域と、極めて立ち上がりの速いクリアでキラキラとした中~高域の組み合わせ。解像度が高くCREEK EVO-CDONKYO A-1VLaudiopro Image11サブシステムAでは情報量が飽和気味ですが、アンプのスピードのお陰で高音質感が際立ちます。音質よりもヨーロピアンテイストの暖かみにを重視しているサブシステムCではイマイチ。メインシステムでは高音質を通り越してむしろレコーディングで使用されたスタインウェイピアノや録音会場の音質(全体にあまり音色が良くないw)の粗がきこえてしまいつつも、血の通った演奏の面白さにそんな欠点が吹き飛んでしまうような印象。展覧会の絵のダイナミクスとフェルツマンの歌心を表現できるのはやはり表現の深いメインシステムの方になります。

これ、録音が2002年5月のメキシコでレコーディングスタッフもメキシコ人。以前あちらのマイナーベルでリリースされていた録音のようです。この音質を聴く限り、日本でカメラータ東京から発売されるにあたり何かしらリマスター?されているような気がするのですが、、、勿論、メキシコ盤のCDを持っていないので何とも言えないのですが、この音質はあっち産ではありえなそうな高音質感とサウンドバランス。 帯にK2レーザーカッティングと書いてありますが、これは高品位なプレスマスターを作る技術ですが、それ以前にJVCビクターレーベルの20bitK2系の音になってる気がします。

カップリング曲の子供のためのアルバムは、チャイコフスキーが作曲した子供向けの小曲集で、ピアノを習うロシアの子供達にとって必修となる曲集。ブルグミュラー25の練習曲 Op.100みたいな非音楽的幼稚曲集(…個人的見解w)とは異なり、極めて音楽的に不備なく洗練された小曲集です。この曲集がプロのピアニストによって演奏されCD収録されること自体がかなり珍しいことですが、フェルツマンは十分にリサイタルでの演奏に耐えうる深い音楽性を湛えた非常に音楽的起伏と歌心にとんだ演奏が為されています。

チャイコフスキーの子供のためのアルバムはシューマンのユーゲントアルバム(こどものためのアルバム)に触発されて書かれた物らしいですが、言われてみると確かにそんな感じも。。。。と書きつつ、実は調べるまで知りませんでした~゜゜(´□`。)°゜。 強いて云えばシューマンはロリコンぽくって、チャイコフスキーのはショタコンっぽい雰囲気。 フェルツマンは自由な抑揚表現と豊かな音楽性を持ってとってもこの小品集を可愛らしく、時にコケティッシュに演奏されていますが、上手いんですけどこれは大人目線の音楽解釈。

敢えて苦言を呈するならば…才能が溢れすぎていること。 こどものアルバムはもっと、こう、才能の赴くがままに音楽を表現しようとするよりも、チャイコフスキーの旋律をそのまま素直なタッチで、清々とした雰囲気で少年合唱団のソプラノのように、バレエを志す小さな子供達のように演奏した方が、本来の曲の持つ素朴さやシンプルな美しさが際立つように思います。とは云えそれではプロの演奏家のレコーディングとして学習用小曲集の域を出ないつまらないものになりかねませんので、なかなか難しいところではありますが。。。昔ラジオで聴いた演奏で、リューボフ・エドリーナというロシア人女流ピアニストが演奏する「子供のアルバム」が非常によかったのですが…残念ながら検索しても出てきませんでした。もし再び録音に出会う機会があったら是非とも確保したいところです。

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